Reclaim the Earth!

コンサルタントのブログ

人が集う場の復活はあるのか?

私が代表理事を仰せつかっている 一般社団法人 The Earth Cafe は、農業、環境、健康、教育、国際協力などをテーマに ”人が出会う場” = Cafe を提供しています。立場の異なる関係者が集い、議論することで、新しい気づきや価値観が生まれ、集いに参加する行動力のある担い手がプロジェクトとして実施していくことを目指しています。

コロナ禍で ”人が集う場” が否定され、逆に人と(物理的)距離を保つことが求められるようになりました。出張などの移動も自粛となり、会食もできない状態が1年半も続いています。

テレワークが推奨され、コミュニケーションを活性化するオンライン会議システムやビジネスチャットツールなども広く普及しましたが、対面でのコミュニケーション、さらにいつもと違うどこかで人と会うという状況はほとんどなくなりました。

あまり親しくなかった人と一緒に旅行する機会があって、旅行中に会話を重ねることで親しくなって、後にビジネスやプロジェクトに発展したという経験を持つ人は多いと思います。ビジネスだけではなく出会いの場は、単なる会話だけでなく、場所やシチュエーションがとても重要なのです。意気投合なんて言葉も出会いの場から生まれます。

対面だと相手の表情などから気持ちを察することもできるし、レスポンスのスピードも早くなります。決断を促す効果もあるでしょう。今は、人と会えないことや移動できないことを理由にして決断を先送りしていることがたくさんあるのではないでしょうか?

決断を経て、行動が生まれます。行動には普通コストが伴います。出張だったり外注だったり、コト消費で経済が動きはじめます。いまは、コト消費に関わる事業がほとんど動かない状況です。コト消費で動いているのは、動画配信のサブスクぐらいしかないでしょう。

一方でモノ消費は堅実ですが、コト消費に伴うモノ消費は低迷しています。たとえば旅行先でお土産を買うとか、イベント開催でノベルティを配るとかそういうモノ消費の動きはほとんどありません。
コト消費に関わっている企業はコロナ禍でたいへんな影響を受けています。飲食業や旅行業、エンタメ業界が注目されていますが、その先の取引先もそうだし、研究開発の外注や、コンサル業なども新しい案件が動いていないので売り上げが大きく落ちているはずです。

メーカ等は過去最高の利益をあげているところが多いようです。経費を使っていないから利益も高まるし、社員にボーナス等で還元していますが、サプライチェーン以外の取引先への発注は激減しています。未来への投資が滞っているので、今後、数年はメーカを中心としたイノベーションは起きにくいでしょう。

なにより危惧したいのは、「人が集まっている状態」に対する社会の嫌悪感がいつまで続くかということです。今は感染リスクがあるでの仕方ないとしても、今後、コロナが収束した後、この嫌悪感だけがしばらくは残るだろうということです。

人間は社会的動物であり、集団で生活する本能的な行動があると思われるのですが、これが嫌悪感という感情的な理由から制限されることの弊害はかなり大きいのではないかと思います。

The Earth Cafe の活動も、人が集わない状況でどのような活動ができるか、イノベーションに貢献できるかを思案しなければなりません。会員さんのみなさんからは期待する活動を募集しています。



農業から脱炭素社会に貢献する

8月8日にオリンピックのマラソンは札幌で開催されました。
東京は暑すぎるだろうと、マラソンと競歩だけ涼しい札幌に持ってきたわけですが、今年の札幌の夏は100年ぶりの暑さでした。連日、朝から30℃を超えていて蒸し暑く、もしかしたら東京よりも暑かったかもしれません。

ところが、マラソンが終わった翌日から気温はぐっと冷え込み、最高気温も22〜23℃、早朝は15℃ほどまで冷え込みました。マラソンでは暑さで多くのアスリートが棄権していましたが、もし、天気の変わり目が少しずれていたら、競技結果も変わっていたかもしれません。

今年の北海道の夏は暑さだけではありません。小雨にも悩まされました。
と思えば、局地的に豪雨が降って、川があふれたりして、農作業は天候に振り回されたようです。

先週から、九州地方でずっと雨が降り続いています。
河川の氾濫や土砂災害に厳重な注意が必要とされ、避難されている方も多くいると思います。

従来、異常気象といわれていたことが、毎年、全国各地、いや全世界で発生しています。もはや「異常」とはいえない頻度です。この原因のひとつとして地球温暖化があると科学的に説明できるといいます。

地球温暖化は二酸化炭素などの温室効果ガスの発生によって引き起こされます。温室効果ガスは石炭や石油等の化石燃料を燃やすことで発生します。地球の温度が1〜2℃高くなるだけで、わたしたちの暮らしに大きな影響を与えるといわれています。

産業革命以降、エネルギーは石炭等の化石燃料に依存しています。その頃から1℃以上も上昇しています。
この危機に対応しようと2000年代から、さまざまなアクションが起こされてきました。「カーボンニュートラル」もそのひとつです。カーボンニュートラルは、温室効果効果ガスの排出量を実質ゼロにしようとする動きです。

2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で、パリ協定が合意されて、2016年1月に発効されています。この協定には、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること。そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトし、21世紀後半には、GHG排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる。(→カーボンニュートラル)としています。

2019年にアメリカのトランプ政権がパリ協定からの離脱を宣言するなどしていましたが、今年2月、バイデン政権で再びパリ協定に復帰してから、世界中でカーボンニュートラルの動きが加速しています。最近では温暖化は環境問題としてだけでなく、世界経済の問題として認識されることが多くなり、機関投資家等が企業のカーボンニュートラルの活動に向けて厳しい目を向けています。

さらに、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は先日、2021年8月9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021〜2040年に1.5℃に達すると発表。2018年の想定より10年早くなると警告していて、一刻の猶予もゆるされない事態になっています。

日本も昨年(2020年)10月の菅首相の所信表明演説で、2050年までにGHG排出を全体としてゼロにすると宣言しています。もはや、企業経営もカーボンニュートラルに積極的にシフトしなければならない状況になっています。

農林水産省もこの5月に発表した「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに農林水産業の二酸化炭素排出ゼロを目指すとして、化学農薬の使用量50%低減、化学肥料使用量の30%低減、有機農業の取り組み面積を25%(100万ha)にする数値目標を示しています。

気候変動による、気温や降雨傾向の変化は農産物の生産量や品質にも大きな影響を与えるとされています。農業における脱炭素の取り組みを急速にすすめていかなければなりません。

企業がSDGs(持続可能な開発目標)、カーボンニュートラルを目指すとき、調達先の脱炭素への取り組みを積極的に評価することになると思われます。たとえば、農業分野では、堆肥の有効利用や不耕起栽培などでGHG排出量の低減に貢献することができます。

「ブランド」は信用を表す”印”

もう長いことブランディングの仕事をしています。

ぼくがブランディングの仕事をはじめたのは、農業の現場で土づくりに向き合い、良質な農産物を試行錯誤しながら生産している農家の取り組みをいかにマーケティングに反映していくかという視点からでした。お客さんにその生産物がつくられる背景を知ってもらい、そのうえで品質を評価してもらわなければなりません。

農産物や食品は、消費者の状態や欲求によってさまざまな評価を受けます。ものすごくお腹がすいているときには、味などはともかくお腹を満たすことが優先されるでしょう。ある程度、お腹がみたされていると、より美味しいものが食べたくなります。さらに進化すると、その農産物や食品がつくられた背景や生産者のポリシーなどが気になるでしょう。

食べるという行為でも、お腹を満たすこと、味わうこと、考えることがあるのです。

農産物等のブランディングの対象となるのは、舌で味わうことと脳で考えることです。

一度食べて、おいしかったものを覚えられます。味といっしょに記憶されるのが、名称やマーク、産地、生産者などの情報でしょう。また、脳で考える人には、見つけてもらうために、Webページに情報を掲載するなどの工夫が必要です。そして、記憶してもらうための”印”が必要になります。

ブランディングにみつけてもらいやすくしたり、記憶してもらうための”印”は必要ですが、その印に関連づけられる味や品質、サービス、生産の背景といった情報が必ず必要になります。

ブランドの語源は、家畜に入れた「焼印」だとされています。これは多数の家畜は放たれている草原で自分の所有する家畜を他人のものと”区別”するためでした。つまり、印であり、記号としての役割なのです。たとえば、家畜の所有者が飼い方や血統を工夫して、他の人が所有する家畜よりも高い評価を受けるようになった場合、その所有者の印、つまり焼印に信用がついてきます。買い手は、その焼印がついている家畜を探すことになるでしょう。

つまり、ブランドは他社と区別可能な役割を果たしていれば、それで役割をはたすことができます。問題は、区別された生産物やサービスが高く評価され、顧客に信用されることです。

とはいえ、できるだけわかりやすく区別された方が良いでしょう。
区別するために、名称、呼称があり、マークがあり、デザインがあります。顧客の記憶にとどめやすい名前やインパクトのあるマーク、そして生産者がプライドを持つことができる、品の良さがかっこよさが求められるかもしれません。

ブランディングをはじめるときに、多くの人がこの目に見えるマークや呼称からはじめます。間違ってはいないのですが、目にみえる部分は、ブランディング活動のほんの一部、氷山の一角であり、その多くは目に見えない活動なのです。

そして、目に見えない部分のブランディング活動は、常に継続しなければなりません。
マークを、名称を開発したことで終了ではないのです。つねにブランディング活動を継続して信用を高めていかなければなりません。

農産物や食品については、ブランドを構築する際の理論が整理されていないケースがよく見受けされます。
どのように品質などの特性を整理したら良いのかわからない。とか、その特性を担保する要件を定義できていない事例が多くあります。

新聞には、「○○のブランド化に取り組む」とか、言われていますが、ブランドが論理的に構築されていないと、そのブランドの”印”はメッキが剥がれることになるでしょう。

「まん延防止(まんぼう)等重点措置」解除

北海道は昨日で「まん延防止」が解除され、今日からは「夏の再拡大防止特別対策」期間に切り替わり、重点地域とされる札幌市は7月25日まで対策が継続されるとのこと。何が変わったからといえば、飲食店の時短要請、酒類提供が1時間伸びたぐらいです。基本的にはまんぼうが継続される様子です。東京に緊急事態宣言が出されているから、地方都市も経済が再開されるわけではありません。首都圏では感染の再拡大の兆候も見られるし、ワクチン接種もすすんでいないので、まだしばらくは我慢の毎日が続くものと思われます。

そんななか、帝国データバンクは、2021年上半期の倒産件数を発表、前年同期を大きく下回り、2000年以降最小となったようです。これは明るいニュースのように思われますが、昨年、多くの事業所で返済据え置きの低金利の融資を十分に受けているため、手元資金は豊富にある状態なので倒産はしないのです。しかし、政府の自粛、営業時短要請を受けている飲食店や不要不急の外出中止を呼びかけられている観光事業者のうち、小規模事業者は借入した手元資金も底をつき、倒産を余儀なくされていると思われます。

借入金の返済はやがて始まります。それまでに景気が大きく浮揚していないと厳しい事業者が多くあるでしょう。また、そのときに備えて技術力の保全や従業員の雇用継続をしなければなりません。さらに、アフターコロナのビジネスは大きく変化していることも予想されます。だから、政府も事業再構築補助金などを出して、業種転換を推進しているのでしょう。

まんぼうは解除されましたが、しばらくは多くの事業者もじっとして様子を見る時期が続きそうです。みんなが様子見になるのでますます経済がは停滞するでしょう。

農業という産業は本来、持続可能性が高いもの。

「持続可能な開発目標」であるSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉が広く浸透して久しいです。いわゆる一流企業の管理職っぽい人がジャケットに、SDGsのあのマークのバッジをつけて歩いています。なんとなく、意識高い系な感じが演出されています。

SDGsは2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す開発目標」です。(詳細はこちら

日本でも外務省を中心に多くの省庁が政策にSDGsの考え方を採用しています。先日、農林水産省から発表された「みどりの食料システム戦略」でもサブタイトルが ”食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現”として、SDGsの考え方が強く反映されています。特にEUの「ファーム to フォーク戦略」などの影響を受けているようです。

国際的な経済システムがSDGsの考え方を取り込み、この考え方に準拠した政策を打ち出さなければならないとという背景があります。流通のルールはSDGsに限らず、国際的なものでは、ISO(国際標準化機構)が定める規格や、G-Gapなどがありました。これに準拠するような国内規格や地域規格を定めている事例も各所で見られ、事業者はこの規格を取得しなければ、企業間取引に不利益なことがあるなどとされてきました。これらの規格を認証する第三者機関も現れました。

今回のSDGsでも地方銀行などが、顧客企業の取り組み状況を整理して宣言をサポートするコンサルティングを有償で実施するなどしています。いまのところ、SDGsに関しては第三者の認証が必要ではなく、自らの対応を分析、整理して公表するだけで良いみたいですが、今後、公的機関が関与して認証ビジネスなどが始まるかもしれません。

強制労働による人権侵害などが起きている地域に生産拠点を置くとか、SDGsに反した活動をしている企業や団体、国家などとの取引があったりすると、イメージ的に大きな損失が発生します。最近でも新疆ウィグル地区での強制労働に関して世界的企業が告発を受けましたね。

さて、2030年のゴールを目標にあらゆる企業がSDGsに準拠した目標を打ち出しています。これらを実現するための研究開発や調達、広報などさまざまな取り組みが今後、活発に行われていくことになります。自社で実現できないことは、SDGs的な取引先を選ぶことになります。

そこで、農業経営ですが、そもそも持続可能性が前提として成り立っている産業です。一部で過剰な農地開発やかんがい、農薬の多様、強制労働、収奪的農業はありますが、日本の農業は、ほとんどが持続可能性が高い状態を維持しているはずです。持続可能でないとすれば、担い手確保が最も大きな課題かもしれません。

さらに、農水省の新政策である「みどりの食料システム戦略」でガイドラインが提示されたので、これらを意識的に実施するだけでSDGs的なアクションを得ることができます。今後、食品産業や外食サービスを中心に農業とさらに深く連携するような傾向が見られるようになるでしょう。

現時点では多くの農業者が ”あたり前のこと” をやっているだけですが、これをSDGs的な取り組みとして整理することは大きな意義があると思われます。