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コンサルタントのブログ

年頭所感

すでに新しい年となって1週間も経ちましたが、みなさま、明けましておめでとうございます。

ところで、2023年は当社(リープス)の設立20周年の年です。
自分でも驚きの社歴です。

今から20年前、起業した当時、勤めていた会社を辞めたのが2002年の7月、それから10ヶ月ほどブラブラしてから起業を決意し、2003年4月に会社を設立しました。

「起業を決意」と書いたものの、それほど大袈裟な感じではなく、大学卒業後に大企業(当時)に就職し、その後、地方の中小企業に転職してみたものの、どうやら自分がサラリーマンに適性がないことを13年間も会社勤めをして気づいたのです。

選択肢として、どこかの会社に就職するか、起業するしか方法がなく、どこかの会社に就職するということは、サラリーマンになるということなので、結局、起業せざるを得なかったというのが実情です。

個人事業主となることも考えましたが、やはり法人化しておいた方が何かと周りに立ち位置も説明もしやすいし、ある種の覚悟みたいなものもできるので法人化しました。法人化の手続きは司法書士などには依頼せず、解説本を読みながら自分でやりました。

農業コンサルティング事業をやる。と決めたものの、同業者はあまりおらず(現在でもあまりいません。)事業が成功する確信もあまりなかったので、会社名から業種やサービスを連想できないように「リープス」と名付けました。

どこの業界にもコンサルタントというのは存在するものです。コンサルタントは組織内にはないリソースを提供する仕事であり、課題解決をお手伝いする仕事です。こと農業の世界においては、課題解決のために必要されるリソースがなんだかわからない。というのもあります。

また農業界では、国や自治体からの支援、農協などの支援があり、外部が参入する隙間がなかったことも一因かもしれません。一方で、農業者の側からすれば、ほぼ無料、あるいは安い手数料で利用できるものの、限られたメニューの中から選ばなければならないので、どうしても差別化とか特徴をアピールすることが難しいということも言えます。

コンサルタントは、お客様あっての仕事です。また、お客様がコンサルタントを使いこなさなければいけません。決して、コンサルタントの言いなりになってはいけないのです。

今は、世界の情勢も不安定だし、日本の政治がアレなんで、農業界に限らず、いろんな界隈でさまざまな制度改正が起きると思います。つまり事業環境が大幅に変化する年になります。

みなさまの経営の一助になるべく、20周年を迎えた今年も精進したいと存じます。
変わらぬご愛顧をよろしくお願い申し上げます。

note始めました。

今年も1年、お世話になりました。

noteを書き始めて1ヶ月程度ですが、年末のご挨拶の時期になりました。まずは、今年1年、皆様にはたいへんお世話になりました。

ブログは2005年ぐらいからワードプレスで構築しているオフィシャル・ウェブページに書いていますが、どうやらnoteの方が使いやすい。というか、更新頻度も上がるのではないかと思い、まず、noteの方に記事をアップしています。同じ内容のものをオフィシャル・ウェブページの方にも上げるようにしていますが、場合によってはnoteだけの記事もあるかもしれません。こちらは「言いたい放題」なので。

さて、コロナ禍も3年目を迎えました。
今年の夏以降は少し行動制限も緩和されましたが、それでもコロナ前のように人にも会えず、あまり活発な活動は行えませんでした。

特に農協さんとの仕事は、農協さんが組合員さん(農家)に気を使い、コロナ対応も厳し目なので、あまり現場に足を運ぶことはできませんでした。

この仕事は現場に出向き、話を伺い、調べて議論することを繰り返すことで、本質を見つけて、より良い提案するものです。情報量が少ないと的確な提案をすることが難しくなります。情報はインターネットや雑誌、新聞などからも入手しますが、現場での取材で得られるものが新鮮です。しかし、ガセネタも多いので見極めが重要です。

経営というのは、技術だけでどうにかなるものではありません。特に農業の場合、国や地域の政治力によって状況が大きく変わります。今年は、グローバルな情勢の変化に現場も振り回された年になりました。そして、状況変化のスピードはとても早く、数ヶ月で全く違う環境に置かれることも珍しくありません。

農業経営は自然や動物、植物を扱うため、急ハンドル、急ブレーキ、急加速ができない産業です。いくら環境が急変したからといって、すぐに対応を打てるものではありません。どうしても数ヶ月、数年先のタイミングまで判断を待たなければならないことがあるのです。

ですから、今の状況を冷静に観察し、中長期的な変化を予測することが欠かせません。周りのみんながやっている。というのが一番危ないのです。

数年後に生き残るために、今、何をやるべきか。

情報を集め、関係者と議論する機会を作らなければなりません。

私も19年前の創業時には、そんなことは考えていませんでした。
技術でどうにかする。と思って身を立てたのですが、農業経営にとって技術は手段です。必要とする技術は目的によって変わります。今は、目的、すなわち存在意義をしっかりと考えなければならないときだと思います。

国際情勢が不安定で、日本の政治や経済も不安要素を多く含んでいます。来年は今年以上に変化の年になると思います。今までと同じということはあり得ません。

みなさんと前向きで深掘りした議論をする機会をどんどん作りたいとおもいます。

地域や産品ブランドは既に存在している?

地域ブランドや地域共通の産品のブランド化には、利害関係者が複数存在することになります。地域であれば、役場や事業者、観光協会や農協、住民などです。産品だと生産者や農協、小売店、レストランなどがあるでしょう。

利害関係者はそれぞれ立場が異なるため、ブランド化によって地域や産品に付加価値をつけることについては大筋での合意はできますが、ブランドの運用方法を細かく決めていくところで利害関係がぶつかり、合意形成には時間がかかります。

例えば、ブランドの立ち上げ時には産品の商品名や地域ブランドを示すロゴなどを統一して、使用規定を定めようとするのですが、すでに自社の商品名で製品を開発、販売している会社があったり、以前から使っていたロゴマークを使った包装材料やパンフレットなどの在庫があったりすると、すぐに新しいブランディング体制に移行するのは難しくなります。

また、地域や産品ブランドは、ブランドの送り手(つくり手)がブランドを意識する前から顧客に支持されている場合が多く、すでに、ブランドが出来上がりつつある場合が多くあります。

ブランドは意識して作られるものではなく、気づいた時には芽が出ているものです。なぜなら、ブランドはお客様の頭の中でその価値が作られるものだからです。

ブランディングは、そのお客様の頭の中で成長するブランド価値を提供する情報によってある程度コントロールしようとするものだと考えています。

つまり、ブランディングはつくり手が全てのコントロール権を持っているわけではないということです。この点、ブランドを担当する人たちは謙虚に考える必要があるでしょう。

すでにお客様がブランドと感じている地域や産品は、少なくとも地域の利害関係者が発信する情報をもとに作られたものがほとんどです。新しいルールを強引に作ることは、すでにある情報の上にブランド価値を感じていた顧客の期待を裏切ることにもなりかねません。

ブランドの統一や移行については十分な調査を重ねて、リスクを管理した上で実施すべきと思います。

地域や産品ブランドの総合戦略

関サバ、大間のクロマグロ、魚沼産のコシヒカリ、松阪牛など、地域の一次産品がブランドとして高値で取引されるようになって久しいわけですが、かつて、戦後、日本が貧しかった時は、食にブランドなどは存在しておらず、味はともかく、安全なもの、栄養のあるものをお腹いっぱい食べることが重要であったはずです。生きるために「胃」を満たすのが食でした。

その後、日本が豊かになることで、飽食の時代と言われるようになってから、食が文化になり、お腹、すなわち胃を満たすだけではなく、おいしさや、それを食べて得ることができる心、知的好奇心を刺激するようになりました。食のブランド化が始まったのです。

ブランド化とは、類似する製品やサービスとの識別を図るためにつける目印であり、名前やマークなどを意味します。ブランディングを翻訳すると「焼印」という意味があることがわかりますが、その昔、共同放牧に出した自分の牛を見分けるために牛に押した印のことだったんですね。

やがて、識別するだけでなく、類似するものとの差別化を図る印という意味も付与するようになりました。そうするためには、何が差別化の要因なのかを明確に示し、顧客に評価してもらわなければなりません。いい加減な不良品に識別可能な印をつければ、逆にその製品やサービスの価値は低下してしまうことになります。

ブランドは信頼の証であり、製品やサービスの提供者にとっても、それを受け取る顧客にとっても重要なものになっていきます。その信頼や価値は受け取る側、つまり顧客によって作られるものとなります。しかし、その顧客に伝えたい価値をわかりやすく、整理して表現することがブランド活動、つまりブランディングということになります。

ブランドの識別は印であるため、その名称やロゴマークといった目に入るデザインと思われる人も多いのですが、ブランディング考える時には、そのロジックとデザインは切り離して考えるべきです。

まずは、そのブランドの価値の源泉やブランディングの目的を整理することが重要で、その価値や世界観を表現するための方法としてデザインを活用することになります。

顧客に見える部分はほんのわずかです。寒い海に浮かぶ氷山は海面に出ているのは全体の体積のわずか1割と言われていますが、ブランドも見えない部分をしっかりと固めることが重要なのです。

それを考えるのがブランド戦略と言えるでしょう。

大変革時代を生き抜くために

ロシアのウクライナ侵攻、米国の利上げによる円安の進行による農業資材の値上がり、長期的な気候変動が原因とされている大雨や旱魃などの頻発、長期におよぶ新型コロナウィルスへの対応と国内外の対応のギャップ、台湾をめぐる中国と米国の摩擦など、このところ社会情勢は不安定になっています。

さらに、日本は世界に先駆けて、少子高齢化、人口減少の局面を迎えています。これまでの人口増加、若い国民、経済発展といった量的発展モデルも限界となっています。今の制度や価値観はこの以前の量的発展モデルをベースにしているので、今日の状況にはフィットしなくなってきています。ここにきて、社会情勢が大きく動いているので、いよいよパラダイム・シフトが発動しそうな予感です。

本来であれば、政府がしっかりと情報収集をした上で仮説を立てて、将来へのビジョンを明確に示して、我々国民を安心させてほしいのですが、今ひとつ、将来は不透明で不安は払拭されていないように思います。

農業経営をめぐっては、農政は「みどりの食糧システム戦略」を策定し、食料や農林水産業の生産性の向上と持続可能性を両立するためにイノベーションを活用するとしています。具体的には、脱炭素や環境負荷の少ない農業の実現のためにスマート農業技術などで解決していこうとするものです。

また、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を策定して、2025年に2兆円、2030年に5兆円を目標に日本の農林水産物や食品の輸出を促進しようとしています。

マクロ的な政策としては、長期的な気候変動や、日本の人口減少、少子高齢化などの背景を考えても「みどり戦略」も「輸出促進」も重要な政策であることは間違いありません。しかし、構想や政策が大枠すぎて、足元の農業経営として何をすべきかわかりにくいのではないでしょうか?

なぜ、農業政策は「みどり戦略」と「輸出促進」に向かっているのか、その背景を考察する必要があると思います。そして、どのような未来が到来するのは予測することが重要です。

私は、今後、農協や生産者団体などの地域としての経営戦略が問われているものと考えています。農協という枠組みで考えるだけでなく、地域の社会や経済と一体となって、その地域の価値をどう高めていくのか、その資源として農業はどのようなポジションにあるのかを議論する場が必要になると思います。

量的発展の時代は、リソースは大都市にあると考えられていましたが、これからの質的発展の時代では、地方がもつ人を惹きつける魅力にフォーカスされることになると思われます。地方は農業などの一次産業が大きな資源となる場合が多いので、チャンスはあるでしょう。