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コンサルタントのブログ

農産物のブランドづくりを考える。

かつて農産物の販売というと、農協で集めて、市場へまとめて出荷するのが一般的でしたが、最近は生産者(団体)自らが販売に取り組むことが増えてきました。

農産物に限らず、何か商品を販売しようとすると、まずはマーケティング活動を行うはずです。商品(農産物)を買ってくれるお客さんはどこにいて、どこで買ってくれるのかということを調査するはずです。

その前に、商品の特性を明確にして、他の農産物の違いをお客さんに理解してもらおうとするはずです。これが「差別化」ですね。

その特性の「差別化」要素を決めたら次に商品を選んでもらうために、わかりやすい名称を考えると思います。

例えば、「大根」は産品の一般的名称であり、名称からほとんどの人がそれが「大根」であることを認知します。しかし、「大根」だけでは、産地や味やどんな料理に使えば良いのかなど特性を推測することができません。

名称は、お客さんにとってその商品を選択するのにわかりやすい目印となりますから、奇をてらうような名称を使わずに、農産物の場合は、「地名 + 産品名」とするのが無難です。

名称にこだわりを持つあまり、名称からどんな産品なのかわからないことも時々あります。大根なのか、タマネギなのか名称からは何も想像できないものは、目印としての機能を持ちません。

そのような目印としてわかりにくい名称をつけてはいけないということはありませんが、お客さんに知ってもらうためには、広告などに多額のコストがかかります。

生産者や生産者団体は、マーケティング戦略などは考えず、自己満足な名称を考えがちです。販売をしたことがないから名称をつけた段階で売った気になって終了するのです。

名称を考える場合には、あくまでも顧客目線であることが求められます。お客さんにとって、その名称から何を想像するかをよく考えてみてください。

ところで「地名+産品名」は非常にわかりやすいのですが、その名称を個人が独占することは難しいと思います。商標登録ができないのです。

しかし、「地名+産品名」であっても、農協や地域の業界団体などが商標を出願する場合は特別に認められる場合があります。それが「地域団体商標」です。

しっかりとマーケティングして、販売実績が伴ってくると商品名称には特性の信頼が蓄積していきます。特性に対する期待度が高まり、使用し(食べ)てみて、期待を裏切らなけば、リピートしてくれますし、お客さん自身が他のお客さんを紹介してくれることもあるでしょう。

次に、その商品の中で一部の生産者や一定の基準を設けて、特別な品質のものを差別化して売ろうとします。その場合は、名称に「特選」とか、「プレミアム」とか、「○○農場産」というような名称をプラスすることで、カテゴリブランドにすることもできます。

いずれにしても、農産物のブランディングは「戦略」が必要だし、多くの場合、地域の利害関係者の合意も必要です。ひとりよがりのブランディングは後々多くの問題を残すことになりかねないので注意が必要です。

畑から食卓までのサプライチェーンを考える。

長く、この仕事をしていると生産者には「サプライチェーン」について理解し、意識している人が少ないと感じます。おそらく北海道の生産者は流通や販売に関しての意識が低いのではないでしょうか?
これは農業だけでなく、一次産業全般に言えることで、恵まれた生産環境があって、大規模、大量に生産することができる背景があるからだと思います。

明治維新の前まで、北海道は「蝦夷」と呼ばれていて、本州(内地)からの商人が北海道の産品を江戸や大阪などに流通させていました。このころの航路は、日本海ルートで、北前船によって本州と北海道との貿易がなされていました。

天然資源が豊かな北海道で昆布やニシンなど海産物は浜にあげれば(内地から)「買い屋さん」がやってきて、値段を付けて買ってくれる。というような状況だったようです。
畑の作物でも小豆などは投機的な作物とされていました。農業者は作るだけで流通には関与しない時代が長く続きました。

農産物や海産物は相対取引よりもせりで価格が決まっていました。つまり、価格の決定権を生産者が持つことはなかったのです。それでも、不満のない価格で買ってもらえたから当時はそれでよかったのでしょう。

15年ぐらい前から、農林水産省では「六次産業化」、経済産業省では「農商工連携」といった事業が始まり、農業者が農産物生産だけでなく、加工や販売まで行うことが始まりました。農商工連携では、農業者等が製造業、販売業と連携することで、生産から販売まで一元的に行おうとする取り組みが積極的に行われるようになりました。

これまでは作ることだけに専念していたのに、急に流通や販売も担うことが求められたのです。これは、生産費(原価)と販売価格に大きな差があり、生産者が出荷後のサプライチェーンで大きな付加価値がついたことを示していて、生産者がそこを担えばもっと儲かるだろうとの目算があったからでしょう。

流通、小売事業者も長い年月で付加価値づくりをしてきました。ブランディングもこのひとつです。特に農産物や海産物については、腐敗などによって廃棄率も高かったので、鮮度保持の技術などの開発も必要で、その結果、高い付加価値を有する加工品も多く作られました。

サプライチェーンの下流に位置する流通、小売、製造によって支えられてきたという側面もあり、生産者がサプライチェーンの下流域までカバーするというのは、いささか急すぎるとも思います。

生産者が価格決定権を持つためには、一般的に流通されているものとの質的な差別化が不可欠です。また、その差別化要素は生産者だけの思い込みではなく、消費者と共有されていなければ売れません。これは、農業に限ったものではなく、あらゆる商品に言えることです。

差別化要因はいろいろあります。
例えば、加工して付加価値を付けたり、直接販売するというのは、六次産業化そのものの活動です。

耕作面積が少なく、生産量を増やすことができない小規模生産者や新規就農者は収益を高めるために、販売単価を高くしなければなりませんが、よくあるのは無農薬とか有機栽培によって差別化を図ろうとしますが、消費者の間口はグッと狭くなり、情報伝達が極めて難しくなります。

他にも、レストランやホテルなど、限られた消費者が限定的に使用する希少な野菜やハーブなどを作付けする人も多いのですが、これも顧客とのマッチングや取引を継続するためのこまめな営業が必要になります。

これらのように、生産から販売までを生産者だけで一元的に行うのは結構難しく、六次産業化の構想を立ち上げたものの継続的に事業を実施できない場合もあるようです。

また、農産品類やその加工品は雑貨やアパレル、電化製品と違い、常温で流通できない場合が多く、冷凍や冷蔵可能な倉庫、配送が確保できなければならないので、流通コストも高くつきます。鮮度を保持できる時間も短い場合が多く、廃棄率も高くなり、扱いにくく利益も出にくいのです。

近年、ライブコマース、産直や通信販売、宅配などの手法でネット等を用いて農産物を消費者に販売しようという新しいタイプの流通業者が現れました。JAなども専用のネットショップを開設し、消費者に直接、訴求しようという動きが活発になっていますが、成功には周到な準備が必要とされるでしょう。

何らかの特性を持つ農産品を特徴のある流通(多くはネット通販)によって、特異的な消費者に売るための戦略が必要ということです。

コロナとの共存の時代に、これからの農業はどう変わるのか?

5月25日の緊急事態宣言の解除から、まもなく1ヶ月が経とうとしています。6月19日には北海道内の都市間、他都府県からの移動自粛要請も解除され、人の動きも戻ってきました。

私もこの数週間、友人などと仕事帰りに食事に行く機会も何度かありましたが、コロナの前のような人出はないように思えます。飲食店の経営者に話を聞くと今後も以前のように人が戻ってくることはなく、良くても7割まで回復するかどうかと予想しているとのことです。

特に会社関係の接待などが禁止になり、領収書をもらって飲食する機会は激減しています。和牛や寿司店など高級食材を使うお店は苦戦しているようです。一方、高級食材を使うお店でも、予約が取れないような超人気店は人は戻っているとの情報もあり、業態やターゲット顧客の属性によって営業の明暗は分かれているようです。

また、高級食材以外では、一般家庭ではなかなか使わないような、ハーブやミニ野菜、ベビーリーフなどの生産者は厳しい状況にあるようです。このような野菜はレストランや宴会場での根強い需要があったのですが、緊急事態宣言からの営業自粛要請で受注がなくなったのです。

レストランで用いるような「おしゃれ野菜」は播種から45〜60日で収穫、出荷される作物が多く、レストランの要望を聞いて、2〜3ヶ月前から準備を始めます。したがって、いますぐ欲しいという需要には対応できません。

北海道で大規模に生産されているコムギやビート、バイレショなどは、例年と変わりなく播種を終え、管理の時期に入っています。今のところ特に大きな影響はないとのことですが、JA等が主催する農機具等の展示会が中止になったことで、機械や資材の買い控えはあるそうなので、関連事業者は苦労していると思います。

また、農業機械の海外での出荷がロックダウン等で停止されていることもあり、事業等で導入予定だった機械が年度内に納品できずにキャンセルされる例もあるとか。大規模農業でも水面下での影響はあるようです。

食品の家庭需要が増えている一方で、外食産業向けの出荷が大きく減少しています。高級食材や外食に特化した野菜などの需要は停滞し、今後もしばらくはこの傾向は変わらないと推測されます。

農産物の流通面から見ると、需要が大幅に減ってだぶついた在庫は、インターネットでの通信販売などで売られるようになりました。消費者も外出が制限されたことで、スーパーなどの店頭での購買からネットでの購入への移行が進みました。今後もこの傾向は続き、拡大していくものと思われます。

農産物の流通に新たに参入する企業も増えると思います。生産者と消費者の架け橋となって、農産物に新たな価値を付与すること新規の顧客を獲得する事例もあると思います。

飲食店を食材調達の面からトータルでサポートする企業も出てくるでしょう。飲食店と産地との結びつきもこれまで以上に強固になると思われます。

さまざまな企業が農産物の生産や流通に関与するようになり、多様性が生まれ、新たなビジネスが展開されるようになるでしょう。そうすると当然、競争が生まれ優れた品質や強いブランド力を持つ産品や流通が生き残る時代になると思います。

ついに、あのスマートスーツ®︎・ライトがAmazonでもお求めいただけるようになりました。しかも Prime 対応で送料無料。

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当社のグループ会社に、北海道大学発ベンチャー企業の株式会社スマートサポートがあります。この会社は、農作業による腰痛発生を少しでも無くせないかという思いからロボット技術を活用した ”パワーアシストスーツ”を開発しています。

その名も「スマートスーツ®︎」です。

パワーアシストスーツと言っても、自分の持つ筋力等を強化する「増力化」を目的とするのではなく、スマートスーツ は「軽労化®︎」を開発のコンセプトとしています。

軽労化の考え方では、作業によって身体にかかる負担を軽減することで、疾病を予防します。負担を軽減しながら作業を安心して、安全に継続することで、作業が適度な運動効果となり、体力の維持、増強に貢献するというものです。

2008年に立ち上げた会社ですが、その2年ほど前から技術開発に取り組んでいて、それ当社で行っていました。開発当初センサにより腰の屈曲具合を感知して背面につけたモータを用いて両肩と両太腿を弾性体(ゴム材)で交差して繋いだ部分をワイヤーで巻き取り、弾性力を姿勢に応じて変化させると言うものでした。(特許取得)

その後、農業の現場を中心に、介護や製造業などの現場でデータをとり、使用者の意見を聞いて改良を重ねてきましたが、スマートスーツは、”今、頑張ってできていること”を楽にするもので、逆に言えば、スマートスーツ がなくても、”今できている”ので、今すぐには不要と言うものでした。

しかし、農作業の場合は農繁期を前に深刻な腰痛を発症したら収穫期の作業に大きな影響を及ぼすし、製造業の場合は労災にもなり生産計画が狂います。また、人手不足が続く介護分野では職場でのケガをなくし、職員の定着率を高めることが求められていました。

そこで、より手軽にお使いいただけるように、センサやモータを外しました。この時点で「ロボット」の定義からは外れてしますのですが、開発者であるロボット学者の強い思いはそのままに、安価で優れた着心地、洗濯もできる「スマートスーツ」の開発に至ったのです。

スマートスーツは2015年頃から試験販売を開始し、ユーザの意見を集めて改良を重ね、2018年の春からは本格販売をはじめました。

「パワーアシストスーツ」というこれまでになかった商材であり、同じカテゴリに入る製品がモータや空気圧をなどの動力を用いて”増力化”を目的としていたので、スマートスーツも”力持ち”になる製品だと勘違いされる事例が後を立たず、ご注文、お問い合わせいただいた方にメールや電話で丁寧に説明をしてまいりました。

最近では、増力系のパワーアシストスーツも軽労化的な目的で新製品を出しはじめていて、市場の認知をも高まったということで、初めて外部ECサイトであるAmazonに出品したのです。外部ECサイトといっても実質的には自社の販売サイトのひとつであることに変わりはありません。

これからの農作業にぜひお試しください。

ブランディングの重要性について

当社では創業後まもなく農業(農産品、生産者、地域、生産方法)などのブランド化にかかるコンサルティング事業を行っています。2015年からはGIサポートデスクで農林水産品の地理的表示(GI)法への登録にかかる北海道地域のアドバイザーをしていますので、ブランディングに関して考え、アドバイスする機会が多くあります。

私は農業コンサルタントとして起業し、生産者や農協などの「作り手」の方々と一緒に仕事をしてきましたが、最終的には「市場にどう評価されるか」ということを明確にイメージするようクライアントと価値観を共有しています。

この「市場にどう評価されるか」に関する一連の作業や活動こそが「ブランディング」になります。作業や活動がブランドの持つ価値を高めていくんですね。

特に農協などが農産物を流通させる時には、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)の存在が明らかになります。生産者個人、生産者組合、農協、地域の飲食店、自治体、地域住民、市場、仲卸業者、加工業者、小売業者、飲食店、消費者など、その活動の影響は非常に広い分野に及びます。

農協など地域を丸抱えしているような組織は利害関係者が増えるのは理解できますが、生産者個人が農場の名称で農産物をブランド化して消費者に直販しようと考えた場合はどうでしょうか。
サプライチェーンの関係者だけがステークホルダーかというと、そうではありません。生産者が所属する地域や農協、他の生産者にも大きな影響を及ぼす場合があります。結局、ブランディングは活動を頑張れば、頑張るほど多くの人に関与するんです。特に農業の場合は、地域との結びつきが強いので、”地元”との良好な関係性を保つことがとても大切です。

ステークホルダーとの良好な関係を築く作業や活動を誤ると、ブランド価値の向上ではなく、価値の毀損になりかねません。ブランディング活動というのは危機管理的にも重要なんです。

積極的なブランディング活動の結果、市場にいる多くの人たちがその品質や特性などが評価され、「価値」が高まってくると、今度は、この「価値」をどこに格納するのかが課題となります。

最も最近では、あらかじめ名称やマークなどを定めて、そこに価値を集約することも当然のようにやられていますが、農業の場合、昔からの地道な取り組みの蓄積によって価値が高まってくることがあるので、後から、ブランドを格納する名称なりマークなりを作らなければならなくなります。

このとき、問題になることとして、その価値は一体誰のものか?ということです。蓄積した価値に貢献したのは、生産者たちなのか、農協なのか。その場合、生産者ということでまとめることはできますが、地域に存在しない流通業者だったりすると、その価値が高ければ高いほどもめる原因になります。

そうならないように、ブランドを管理する責任者が戦略的にブランド活動を行う必要があるんですね。

ところで、ブランドの「活動」をせず、名称やマークを作って喜んでいる人もいますが、これはブランディングとは言えません。ぜひ、戦略的に「市場に評価される」活動をしていただきたいと思います。