北海道の日本海側に位置する小さな漁村で、”核のゴミ”の最終処分場の選定に向けた文献調査の賛否が争点となった町長選挙が行われ、文献調査に応募した前町長が、反対派の前町議を破って当選しました。
文献調査を受け入れると町には多額の交付金が入り、これで高齢化と過疎の町の振興を図ろうというのが再選を果たした町長の政策です。
ここでは、”核のゴミ”についてではなく、超高齢化と人口減少が加速的に進む過疎化が著しい小さな漁村のコミュニティとしての持続可能性について考えてみたいと思います。
寿都町はホッケやウニ、カキなどの漁業がさかんな町です。かつてはニシン漁でおおいに栄えたといいます。1950年頃は人口も11,000人を超えていましたが、年々、人口は減少し現在は3,000人を切り、高齢化率は39%以上と全国平均を大きく上回っています。
寿都町は典型的な一次産業を主体とする過疎の町といえるでしょう。
しかし、この寿都町、ふるさと納税などでは、いくらやたらこなどが大人気で、全国のランキングにも常に上位にいて、全国から広く注目を集めています。地域に素晴らしい産品があり、ふるさと納税という制度を利用して全国に販売し多くの寄付金を集めていても、なお、収入を必要としているのです。今回の選挙では、”核のごみ”の受け入れを検討して歳入を得ることで町の振興を図る。これを町民が選択しました。
そこに住んでいない人は、安全性が確保されていない核のゴミを処分場建設を受け入れようとするなんて。と強く批判しますが、行政サービスの継続や町としての持続可能性を考えるうえで、町民は苦渋の選択だったと思います。
寿都町に限らず、都市部とのアクセスがよくない町村は、都市部に人口が流出しており、人口減少と高齢化が進んでいます。その町で暮らし、働く人が少ないということは所得税にも期待することができません。地域に素晴らしい一次産品があったとしても、作り手、担い手がいません。
人をひきつける価値をどうやって生み出していくかが、地域存続の課題となるでしょう。
かつて北海道には多くの炭鉱があり、そこで働く人が大勢いて、町が栄えていました。しかし、国のエネルギーが石炭から石油などになることで、多くの炭鉱は閉山し、人々は去り、町は消滅しました。その「場」の価値が消失してしまったからです。
一次産業は、その地域に暮らす人だけでなく、我々、都市部の人たちの食を供給する国民が守るべき資源です。エネルギーのようにすべてを輸入に頼り、地域の価値を消失させることは、今はできないでしょう。
地方の小さな地域に「価値」を生み出すことが、いまの我々には求められています。