8月8日にオリンピックのマラソンは札幌で開催されました。
東京は暑すぎるだろうと、マラソンと競歩だけ涼しい札幌に持ってきたわけですが、今年の札幌の夏は100年ぶりの暑さでした。連日、朝から30℃を超えていて蒸し暑く、もしかしたら東京よりも暑かったかもしれません。
ところが、マラソンが終わった翌日から気温はぐっと冷え込み、最高気温も22〜23℃、早朝は15℃ほどまで冷え込みました。マラソンでは暑さで多くのアスリートが棄権していましたが、もし、天気の変わり目が少しずれていたら、競技結果も変わっていたかもしれません。
今年の北海道の夏は暑さだけではありません。小雨にも悩まされました。
と思えば、局地的に豪雨が降って、川があふれたりして、農作業は天候に振り回されたようです。
先週から、九州地方でずっと雨が降り続いています。
河川の氾濫や土砂災害に厳重な注意が必要とされ、避難されている方も多くいると思います。
従来、異常気象といわれていたことが、毎年、全国各地、いや全世界で発生しています。もはや「異常」とはいえない頻度です。この原因のひとつとして地球温暖化があると科学的に説明できるといいます。
地球温暖化は二酸化炭素などの温室効果ガスの発生によって引き起こされます。温室効果ガスは石炭や石油等の化石燃料を燃やすことで発生します。地球の温度が1〜2℃高くなるだけで、わたしたちの暮らしに大きな影響を与えるといわれています。

産業革命以降、エネルギーは石炭等の化石燃料に依存しています。その頃から1℃以上も上昇しています。
この危機に対応しようと2000年代から、さまざまなアクションが起こされてきました。「カーボンニュートラル」もそのひとつです。カーボンニュートラルは、温室効果効果ガスの排出量を実質ゼロにしようとする動きです。
2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で、パリ協定が合意されて、2016年1月に発効されています。この協定には、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること。そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトし、21世紀後半には、GHG排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる。(→カーボンニュートラル)としています。
2019年にアメリカのトランプ政権がパリ協定からの離脱を宣言するなどしていましたが、今年2月、バイデン政権で再びパリ協定に復帰してから、世界中でカーボンニュートラルの動きが加速しています。最近では温暖化は環境問題としてだけでなく、世界経済の問題として認識されることが多くなり、機関投資家等が企業のカーボンニュートラルの活動に向けて厳しい目を向けています。
さらに、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は先日、2021年8月9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021〜2040年に1.5℃に達すると発表。2018年の想定より10年早くなると警告していて、一刻の猶予もゆるされない事態になっています。
日本も昨年(2020年)10月の菅首相の所信表明演説で、2050年までにGHG排出を全体としてゼロにすると宣言しています。もはや、企業経営もカーボンニュートラルに積極的にシフトしなければならない状況になっています。
農林水産省もこの5月に発表した「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに農林水産業の二酸化炭素排出ゼロを目指すとして、化学農薬の使用量50%低減、化学肥料使用量の30%低減、有機農業の取り組み面積を25%(100万ha)にする数値目標を示しています。
気候変動による、気温や降雨傾向の変化は農産物の生産量や品質にも大きな影響を与えるとされています。農業における脱炭素の取り組みを急速にすすめていかなければなりません。
企業がSDGs(持続可能な開発目標)、カーボンニュートラルを目指すとき、調達先の脱炭素への取り組みを積極的に評価することになると思われます。たとえば、農業分野では、堆肥の有効利用や不耕起栽培などでGHG排出量の低減に貢献することができます。