「持続可能な開発目標」であるSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉が広く浸透して久しいです。いわゆる一流企業の管理職っぽい人がジャケットに、SDGsのあのマークのバッジをつけて歩いています。なんとなく、意識高い系な感じが演出されています。
SDGsは2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す開発目標」です。(詳細はこちら)
日本でも外務省を中心に多くの省庁が政策にSDGsの考え方を採用しています。先日、農林水産省から発表された「みどりの食料システム戦略」でもサブタイトルが ”食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現”として、SDGsの考え方が強く反映されています。特にEUの「ファーム to フォーク戦略」などの影響を受けているようです。
国際的な経済システムがSDGsの考え方を取り込み、この考え方に準拠した政策を打ち出さなければならないとという背景があります。流通のルールはSDGsに限らず、国際的なものでは、ISO(国際標準化機構)が定める規格や、G-Gapなどがありました。これに準拠するような国内規格や地域規格を定めている事例も各所で見られ、事業者はこの規格を取得しなければ、企業間取引に不利益なことがあるなどとされてきました。これらの規格を認証する第三者機関も現れました。
今回のSDGsでも地方銀行などが、顧客企業の取り組み状況を整理して宣言をサポートするコンサルティングを有償で実施するなどしています。いまのところ、SDGsに関しては第三者の認証が必要ではなく、自らの対応を分析、整理して公表するだけで良いみたいですが、今後、公的機関が関与して認証ビジネスなどが始まるかもしれません。
強制労働による人権侵害などが起きている地域に生産拠点を置くとか、SDGsに反した活動をしている企業や団体、国家などとの取引があったりすると、イメージ的に大きな損失が発生します。最近でも新疆ウィグル地区での強制労働に関して世界的企業が告発を受けましたね。
さて、2030年のゴールを目標にあらゆる企業がSDGsに準拠した目標を打ち出しています。これらを実現するための研究開発や調達、広報などさまざまな取り組みが今後、活発に行われていくことになります。自社で実現できないことは、SDGs的な取引先を選ぶことになります。
そこで、農業経営ですが、そもそも持続可能性が前提として成り立っている産業です。一部で過剰な農地開発やかんがい、農薬の多様、強制労働、収奪的農業はありますが、日本の農業は、ほとんどが持続可能性が高い状態を維持しているはずです。持続可能でないとすれば、担い手確保が最も大きな課題かもしれません。
さらに、農水省の新政策である「みどりの食料システム戦略」でガイドラインが提示されたので、これらを意識的に実施するだけでSDGs的なアクションを得ることができます。今後、食品産業や外食サービスを中心に農業とさらに深く連携するような傾向が見られるようになるでしょう。
現時点では多くの農業者が ”あたり前のこと” をやっているだけですが、これをSDGs的な取り組みとして整理することは大きな意義があると思われます。