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農水省、みどりの食料システム戦略を正式決定!

少し前のニュース(5月12日)になりますが、農水省が「みどりの食料システム戦略」を決定しました。資料をざっくりと読んで今後の農業政策に対して現場がどのように対応すべきか考えてみます。

ニュースサイトにもまとめられているように、ざっくり言えば、肥料や農薬の使用料を減らし、農機の電化などを通じて炭酸ガスの排出量を積極的に抑制、農地に炭素吸着することで農業の環境負荷を減らすとともに、スマート農業によって生産基盤強化を図りましょう。というものです。具体的なアクション・プランについても発表になっています。具体的な目標が示されているものについては以下の通り、畜産関係については、今後行うべき取り組みとしての方向性が示されるにとどまっています。また、これらの具体的目標を達成するために、「持続的な地域の産業基盤の構築」や「消費者の理解・行動変容」が挙げれれています。

地球温暖化対策(ゼロエミッション化)
・園芸施設について2050年までに化石燃料を使用しない施設への完全移行
・新規販売される農業機械について2040年までに化石燃料を使用しない方式に転換
・園芸分野において2035年までに廃プラスチックのリサイクル率を100%に引き上げ
・2030年までに、農地、草地におけるCO2吸収量を倍増

化学農薬の低減
・化学農薬のみに依存しない総合的な病害虫管理体系の確立・普及を図る。
・2040年までに新規農薬等の開発し、2050年までに化学農薬使用量50%低減を目指す。

化学肥料の低減
・2050年までに、化学肥料を使用量を30%低減

有機農業の取り組み拡大
・2050年までにオーガニック市場を拡大し、有機農業の取り組み面積の割合を25%(100万ha)に拡大
・2040年までに次世代有機農業技術を確立

農林水産省 みどりの食料システム戦略参考資料より

いずれも、持続可能性を優先するものであり、国連のSDG’sに準拠したものとなっています。
これまでも、個別に取り組みが実施されたものが、持続可能性に向けて集約されて整理されたとの印象です。

確かに、化学農薬や化学肥料の低減した先には、結果として有機(的)農業があるのですが、現在の有機農業(有機JAS認証を取得していないが有機農業が行われている農地を含む)は、0.5%(23.7千ha)です。これを30年間の間に50倍にしようとする計画です。欧州からの Farm to Fork を倣い、追随する構造になっています。果たして、有機農業の面積を増やすという結果の実現で、最大の目的である脱炭素が実現できるのかについては疑問が残ります。

有機農業を実践するためには、堆肥の製造や運搬、散布、除草、防除などで、慣行農業以上に人手とコストがかかります。生産性は低下し、マーケットでも受け入れられないならば有機農業の面積は増えません。目的と手段の間に合理的な説明が必要になると思います。

草地や畑地にはCO2を貯蔵することはできますが、土壌の種類によって吸着可能な炭素量は大きく異なります。また、耕起することで酸素に触れることで有機物の分解は進みます。積極的に堆肥をやることで土壌中の炭素貯蔵量は増えると思いますが、そこに期待するよりも、堆肥を入れることで土壌の物理性や化学性が改善されることに着目すると、生産性も維持することができるでしょう。

農業経営者にしてみれば、努力に見合った売り上げや利益が上がることが前提であり、そのためには、生産性を維持したまま、資材や人手などの投入量を減らすことが目的であり、なおかつ、生産物の価値がたかまることが重要になります。個々の農業者がそのような努力を積み重ねた結果、環境にも貢献するという見方が必要でしょう。

有機農業の面積を増やすことは結果であって、それで脱炭素が実現するとは思えないのですが。