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畑から食卓までのサプライチェーンを考える。

長く、この仕事をしていると生産者には「サプライチェーン」について理解し、意識している人が少ないと感じます。おそらく北海道の生産者は流通や販売に関しての意識が低いのではないでしょうか?
これは農業だけでなく、一次産業全般に言えることで、恵まれた生産環境があって、大規模、大量に生産することができる背景があるからだと思います。

明治維新の前まで、北海道は「蝦夷」と呼ばれていて、本州(内地)からの商人が北海道の産品を江戸や大阪などに流通させていました。このころの航路は、日本海ルートで、北前船によって本州と北海道との貿易がなされていました。

天然資源が豊かな北海道で昆布やニシンなど海産物は浜にあげれば(内地から)「買い屋さん」がやってきて、値段を付けて買ってくれる。というような状況だったようです。
畑の作物でも小豆などは投機的な作物とされていました。農業者は作るだけで流通には関与しない時代が長く続きました。

農産物や海産物は相対取引よりもせりで価格が決まっていました。つまり、価格の決定権を生産者が持つことはなかったのです。それでも、不満のない価格で買ってもらえたから当時はそれでよかったのでしょう。

15年ぐらい前から、農林水産省では「六次産業化」、経済産業省では「農商工連携」といった事業が始まり、農業者が農産物生産だけでなく、加工や販売まで行うことが始まりました。農商工連携では、農業者等が製造業、販売業と連携することで、生産から販売まで一元的に行おうとする取り組みが積極的に行われるようになりました。

これまでは作ることだけに専念していたのに、急に流通や販売も担うことが求められたのです。これは、生産費(原価)と販売価格に大きな差があり、生産者が出荷後のサプライチェーンで大きな付加価値がついたことを示していて、生産者がそこを担えばもっと儲かるだろうとの目算があったからでしょう。

流通、小売事業者も長い年月で付加価値づくりをしてきました。ブランディングもこのひとつです。特に農産物や海産物については、腐敗などによって廃棄率も高かったので、鮮度保持の技術などの開発も必要で、その結果、高い付加価値を有する加工品も多く作られました。

サプライチェーンの下流に位置する流通、小売、製造によって支えられてきたという側面もあり、生産者がサプライチェーンの下流域までカバーするというのは、いささか急すぎるとも思います。

生産者が価格決定権を持つためには、一般的に流通されているものとの質的な差別化が不可欠です。また、その差別化要素は生産者だけの思い込みではなく、消費者と共有されていなければ売れません。これは、農業に限ったものではなく、あらゆる商品に言えることです。

差別化要因はいろいろあります。
例えば、加工して付加価値を付けたり、直接販売するというのは、六次産業化そのものの活動です。

耕作面積が少なく、生産量を増やすことができない小規模生産者や新規就農者は収益を高めるために、販売単価を高くしなければなりませんが、よくあるのは無農薬とか有機栽培によって差別化を図ろうとしますが、消費者の間口はグッと狭くなり、情報伝達が極めて難しくなります。

他にも、レストランやホテルなど、限られた消費者が限定的に使用する希少な野菜やハーブなどを作付けする人も多いのですが、これも顧客とのマッチングや取引を継続するためのこまめな営業が必要になります。

これらのように、生産から販売までを生産者だけで一元的に行うのは結構難しく、六次産業化の構想を立ち上げたものの継続的に事業を実施できない場合もあるようです。

また、農産品類やその加工品は雑貨やアパレル、電化製品と違い、常温で流通できない場合が多く、冷凍や冷蔵可能な倉庫、配送が確保できなければならないので、流通コストも高くつきます。鮮度を保持できる時間も短い場合が多く、廃棄率も高くなり、扱いにくく利益も出にくいのです。

近年、ライブコマース、産直や通信販売、宅配などの手法でネット等を用いて農産物を消費者に販売しようという新しいタイプの流通業者が現れました。JAなども専用のネットショップを開設し、消費者に直接、訴求しようという動きが活発になっていますが、成功には周到な準備が必要とされるでしょう。

何らかの特性を持つ農産品を特徴のある流通(多くはネット通販)によって、特異的な消費者に売るための戦略が必要ということです。