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TS用搾乳ロボット事業成果報告会・見学会を開催

別海町の瀬下牧場で稼働するつなぎ牛舎用搾乳ロボット「ROBOMAX」

 本年度の農林水産省の事業で実施している。TS(タイストール:つなぎ牛舎)用の搾乳ロボットの報道機関向け報告会が本日(2月17日)、JA道東あさひの会議室で開催されました。
 酪農業界からかなり注目されているこのプロジェクトですが、協議会(事業実施主体)としての公式な情報公開は今回がはじめてになります。
 私(当社)も協議会の関係メンバーとして本事業の計画段階から参加しています。今回の報告会でリリースした情報については添付のニュースリリースのとおりです。

 政府は酪農家の規模拡大をすすめてきました。大規模酪農ではフリーストールという群管理型の飼養方法が一般的で、搾乳ロボットもこのフリーストールに対応するものばかりでした。フリーストール対応型の搾乳ロボットは、牛舎内で自由に行動する牛が自らロボットに入るというものです。一方で、つなぎ牛舎型はロボットの方から係留されている牛にアプローチをする形式となっています。

 酪農家の規模拡大が進むなかにあっても、日本の酪農家およそ1万5千軒のうち8割がこのつなぎ牛舎型といわれています。今回、つなぎ牛舎型の搾乳ロボットを導入しうた日本一の生乳生産量を誇る別海町(道東あさひ農協)でも、約7割がつなぎ牛舎です。

 別海町(根釧地区)は、戦後、パイロットファーム計画や新酪農村といった国家プロジェクトとして酪農を振興してきました。この地域の多くの酪農家は戦後、家族で入植し酪農を営んできたという歴史があります。つまり、酪農業は家業でなのです。

 入植から40〜50年の時間が経過し、酪農家も2代目、3代目に家族継承されています。この間、酪農技術は大きく進歩し家族労働あたりの乳牛の飼養頭数も大きく増えました。一方で離農、営農中止となる酪農家も多く、残された酪農家に生乳生産が託され、労働負担がどんどん増加しています。

 つなぎ牛舎経営における労働イノベーションへの期待は大きく、なかでもつなぎ牛舎に対応可能な搾乳ロボットへの期待は大きいものがありました。しかし、世界的な酪農のトレンドは規模拡大ですから、今後、マーケットが縮小すると思われる家族経営、小規模経営のつなぎ牛舎型のロボットを開発しようとする気運は決して高いとはいえません。

 しかし、カナダのケベック州にあるベンチャー企業、Milkomax社は、この課題を解決すべく、つなぎ牛舎に適応可能な搾乳ロボットの開発をすすめてきました。というのも、ケベック州は日本と同じように家族経営、小規模経営の酪農家が多くを占めていたからです。

 私は2年前にこの動きを調査すべく、のちに今回の事業を実施することになる協議会のメンバーである道東あさひ農協バイオマスソリューションズ社とともに同社を訪問した経緯があります。

 Milkomax社では、これまでに120台のロボットを酪農家に導入し、着実に実績を重ねてきました。これを日本の牛舎、乳牛に対応可能かということで本事業を本年度、農林水産省の予算で実施することになりました。

 カナダの一般的な牛舎に比べると日本の牛舎が狭小であり、とくに新酪農村で設置された典型的な牛舎の構造に対応できるかどうかを検証したわけです。また、搾乳ロボットの導入により、酪農家の労働時間や作業負荷がどの程度減少したのかを分析しました。

 協議会メンバーであり実証牧場に指定された瀬下牧場は新酪農村計画によって昭和44年に入植し、牛舎は当時の典型的な構造を残したまま、増改築により増頭対応し、現在は家族労働(牧場主とその妻が主体)で90頭を搾乳しています。

 今回、日本向けに導入したMilkomax社の”ROBOMAX”は、新たに搾乳ユニットとしてイギリスのFULLWOOD社のMerlin2を搭載した最新モデルであり、従来モデルと比べ、静音化、高速化が図られています。そのスペックは1日におよそ60頭の搾乳が可能であり、プログラムによって1日の搾乳回数も設定可能であることから、ほぼ24時間(洗浄、メンテナンスを含む)の運転が可能で、牛に負担をかけずに生産性を高めることが可能とされています。
 カナダにおける実績では、10〜15%の生産向上が図られたとされています。

 導入牧場となった瀬下牧場では昨年の9月に運用を開始し、乳牛のトレーニングを経て、段階的に増頭し、現在では、ほぼフルスペックである60頭の搾乳を行えるようになっています。

 協議会の技術アドバイザリーボードの北海道大学大学院情報科学研研究室の田中孝之氏によれば、”ROBOMAX”の導入により、昨年の11月時点の30頭搾乳時点でも、最も作業負担が大きい搾乳作業にかかる時間は4.9時間から2.8時間に半減しています。また作業負担(消費カロリー)は1463kcalから732kcalに半減していることが確認されました。現在は60頭の搾乳となっているので、およそ9割程度の作業時間、負担の削減が図れているものと推測されます。(現在調査中)
 なお、瀬下牧場の場合、飼養90頭のうち、ロボット搾乳をしているのは60頭であり、残りの30頭は従来のパイプラインでの搾乳作業が残っていますので、搾乳作業そのものがなくなることはありません。
ところで、パイプラインは”ROBOMAX”の併存していますから、万が一、ロボットにトラブルがあった場合にも搾乳は可能です。

 酪農家に限らず、ロボットの導入は、現在、実施している作業をロボットに代替させるのではなく、作業体系や働き方に対する姿勢を根本的に変革することを意識しなければなりません。つまり、ロボットに搾乳させることで空いた時間をどのように活用するか、それは、家族の労働への関与を減少させることを目的とする場合もあれば、さらに増頭し生産性を増加させることかもしれません。
 カナダでの先行事例の調査では、経営主がより経営を俯瞰的に見ることができるようになったことで、牧場内での事後が減少するなど、経営の質の向上もみられたことがわかっています。

 この”ROBOMAX”の国内販売価格は、輸入代理店のピュアライン社が4,600万円(設置費、1年間のメンテナンス料込、消費税別)での販売を予定しています。フリーストール用の搾乳ロボットと比較すると割高に思えますが、搾乳ロボットと移動させるロボットの2台がひとつの製品に装備されていると考えれば、決して高い価格とはいえないのではないでしょうか。
 また、このロボットは牛舎を新築することなく、従来の牛舎に導入することを想定しています。昨今、高騰している牛舎の建築コストを考えれば、より導入もしやすくなるでしょう。なお、導入には既存牛舎の改修等も必要となり、全体的な導入コストは、導入牧場の状況によって相当程度、変わるものと思われます。

 ”ROBOMAX”を導入する意義を考え、導入効果をどのように評価するかなど、それぞれの酪農経営のあり方にあった導入方法があると思われます。そして、何より、酪農家の”働き方”を大きく変える可能性のあるロボットだと思われます。

<つなぎ牛舎ロボットに関する過去の記事>