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生産現場での空間放射線量の測定結果(別海、中標津)

 大震災と同時に起きた未曾有の原発事故によって、原子力発電所のある福島県を中心に広い範囲で多量の放射性物質が地表面に降下しました。農地の表土は放射性物質によって汚染され、屋外で保管していた飼料用の稲わらを食べた肉牛から、食品衛生法の暫定規制値(500ベクレル/kg)を上回る放射性セシウムが検出され、牛肉の出荷が停止される事態にもなりました。

北海道は事故が起きた福島第一原子力発電所からの距離も遠く、放射性物質の降下はほとんどないと見られています。北海道が行った土壌モニタリング調査でも原発事故の前後で土壌中の放射線量が増えたという報告はなされていません。この8月8日の調査でもヨウ素131では全ての調査ポイントで不検出、セシウム137についても最大で10.2ベクレル/kg(乾土)という値が公表されています。

この結果を見ても北海道の農業は放射性物質に関して「安全」です。しかし、生産農家で使用している肥料や飼料などの資材は北海道外で生産されているものも多く、万が一、放射線で汚染された資材が混入されていた場合には、この安全性が大きく揺らいでしまいます。

北海道では、耕種農家畜産農家肥料や土壌改良資材を製造、販売する業者に対して、放射性物質の暫定許容値を超えないように注意喚起をしています。生産者にとっても清浄な土壌を維持するために、細心の注意を払っているはずです。

しかし、原発事故後に設定された暫定許容値は、肥料、土壌改良資材、培土:400 Bq/kg(製品重量)以下、汚泥肥料:200 Bq/kg(原料汚泥)以下、牛、馬、豚、家きん等用飼料:300 Bq/kg(濃厚飼料:現物ベース、粗飼料:水分80%換算)以下という数値であり、これ以下の数値であれば、流通できることになっています。

これらの暫定許容値は北海道の土壌の環境放射能水準から見れば非常に高い数値であるように思われます。放射線について清浄な土壌に対して、暫定許容値をクリアしているとはいえ、どうしてわざわざ高い放射線量を含む資材を使わなければならないのでしょうか?

放射性物質は目で見ることはできません。本当の意味で農産物の安全性を保証するならば農産物等に含まれる放射線量をベクレル単位で測定しなければなりません。しかし、それには外部の専門機関での検査が必要になり、高額な検査費用が必要になります。とても生産者だけの手に追えるような話ではありません。

では、生産者は自らの経営の放射性物質のリスクをどのように管理したら良いのでしょうか。

先週末、別海町中西別の酪農家、臼井貴之さんと、中標津町俣落の酪農家、竹下耕介さん、中標津町東当幌地区で堆肥生産を行う株式会社バイオマスソリューションズの藤本達也社長は、それぞれの生産現場における放射性物質のリスクを知るために、帯広畜産大学の宮竹史仁講師とともに空間線量の測定を行いました。

宮竹先生の提案により、下記の測定条件を設定し、飼料やふん尿、牛舎内環境等、あらゆる箇所の空間線量の測定を行いました。

1.測定機器
簡易放射線測定器「ECOTEST TERRA-P+」(ウクライナ製:ガイガー=ミュラー管式)でガンマ線を測定。

(シンチレーション式放射線測定器よりも精度が劣りますが、測定器が安価で誰でも簡単に測定することがでる。今回測定する測定器の精度は±25%内であり、測定値が若干高く出てくる傾向がある。)


2. 測定方法

① 何も無い屋外で空間線量(毎時マイクロシーベルト:μSv/h)を測定します(これが基準値となります)。
② 測定箇所に測定器を近づけて放射線量を測定します。
③ ①と②の放射線量の値が大きく異なる場合、何らかの放射性物質が含まれていると考えられます。
④ 万一、③で高い値が検出された場合にはサンプリングを行い、帯広畜産大学でシンチレーション式放射線測定器も用いて放射線量(μSv/h)を再度測定します。
⑤ ④でも放射線量が高い場合は、専門機関において放射線量(Bq/kg)の測定を依頼して下さい(帯広畜産大学では分析機器が無いため測定できません)。

 

 放牧地の地表面での空間線量の測定

 

 飼料からの放射線量の測定

 

牛舎内(臼井牧場)での放射線量の測定

 

牛舎内(竹下牧場)での放射線量の測定

測定結果は、すべての箇所で基準となる屋外の空間線量(環境線量)と同等の数値が計測されました。環境線量もここで使用した計測器の数値で0.09μSVであり、ほぼ定常値であり、今回の測定箇所では外部から高い放射線量を含む資材が持ち込まれていたとは考えられない数値です。

中標津町で乳製品製造工場から排出されている汚泥を原料に堆肥を製造している株式会社バイオマスソリューションズの生産現場でも、原料汚泥、水分調整材の木材チップ、製品堆肥で環境放射線量を大きく上回るような測定結果は見られませんでした。

消費者に対する安全を完全に担保しようとすると、生産物中の放射性物質の量をベクレル単位で計測し、不検出であることを証明しなければなりません。しかし、現実的に測定が困難であるならば、生産者の努力として環境線量の管理は、生産者自身の安心のため、また、顧客に対する信用を昂揚ために有効であると思います。

現在の放射性物質を含む飼料や肥料の流通の状況、被災地で発生した放射性物質に汚染されたガレキや土壌の管理の方向をみると、汚染物質を全国に拡散する傾向が見られます。たとえ暫定許容値を下回っていたとしても、北海道のように非汚染の地域に対する流通は阻止すべきだと考えます。日本の食を守る最後の砦となっても北海道の土壌は守らなければなりません。

そのためには、外部から購入する資材の流通を拒むばかりではなく、北海道の農業は、肥料や飼料、そしてエネルギーの自給を高め、外部環境への依存をできるだけ減らした経営を確保すべきであると私は考えます。

9月23〜24日には、今回、空間線量の測定を行った3名が中心となって企画している The Earth Cafe が別海町、中標津町で開催されます。もちろん、今回の放射線量の測定についても話題にのぼるでしょう。彼らが自らの酪農経営、そして北海道の農業を放射性物質からどのように守っていこうとするのか、重大な決意が述べられることでしょう。

今回の空間放射線量の測定結果は下記からすべてご覧になることができます。
彼らは今後も継続して、定期的に空間線量の測定と公表を計画しています。

 竹下牧場(中標津町俣落)空間放射線量測定結果

 臼井牧場(別海町中西別)空間放射線量測定結果

 株式会社バイオマスソリューションズ 空間放射線量測定結果

※上記の画像をクリックすることで測定データ(PDF)をご覧になることができます。
【参考情報】

1.  放射線量の単位について
・  ベクレル(Bq):放射性元素で、1秒間に1個の原子が崩壊して放射線を出す場合が1ベクレルです。例えば、水1リットル(1kg)中で毎秒200個の放射性セシウムが放射線を出しているとすれば、その水の放射線量は200 Bq/kgとなります。
・  シーベルト(Sv):放射線が人体に当たった場合(外部被爆)に使用される単位です。通常は1時間当たりの放射線量(μSv/h)で表示します。なお、一般公衆の線量限度は年間当たり1mSvであり、これは0.114 μSv の放射線量を24時間365日常に浴びている値となります。

<0.114μSv/h × 24時間 × 365日 = 約1mSv/年>

・  放射線や原子にはいろいろな種類があるので、シーベルト(Sv)からベクトル(Bq)に簡単に換算することはできません。
2.  放射性物質について
・  放射性セシウム137:半減期約30年
・  放射性セシウム134:半減期約2年
・  放射性ヨウ素131 :半減期約8日

(半減期:放射性物質が放射線を出す能力(放射能)が元の半分になるまでの期間)
3.  放射性セシウムの暫定許容量農林水産省
・  肥料、土壌改良資材、培土:400 Bq/kg(製品重量)以下
・  汚泥肥料:200 Bq/kg(原料汚泥)以下
・牛、馬、豚、家きん等用飼料:300 Bq/kg(濃厚飼料:現物ベース、粗飼料:水分80%換算)以下

 

One thought on “生産現場での空間放射線量の測定結果(別海、中標津)

  1. SUZUKI Yoshihito

    空間放射線量を測定した臼井貴之さんからFBにコメントをいただいたので転載します。

    先日行った放射性物質調査の結果を、コーディネートしていただいた株式会社リープスさんにまとめていただきましたので掲載致します。
     私たち生産現場にとって放射性物質は未知無縁の世界でありました。
     しかしこの震災によって生産者だけでなく消費者もまた長い時間後世に渡り、現実問題として向き合っていかなくてはならなくなりました。
     消費者の皆さんの求めるものは「安心」、その安心を担保する為に私たち生産者は「安全」を確保しなくてはなりません。
     しかしそのために実際何をすれば良いのか国からの具体的な指示はありません。
     今、自分の農場に放射性物質が無くとも、どのような形で侵入して来るかわからない状況はわずか隣町での出来事でした。今回私は生産者が安全を確保できるよう、自らの牧場よりこの状況に警鐘を鳴らし、沈黙による防衛ではなく発信による守りのスタートとして行動いたしました。

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