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コンサルタントのブログ

人と野生動物との良い関係

上の写真は2018年7月18日の北海道新聞のWebサイトのスクリーンショットですが、札幌市内の国道沿いにヒグマが出没し、たまたま通りかかったカメラマンが撮影したとのこと。このクマは母グマで近くに子グマがいる可能性もあるとのこと。

実はこの写真が撮れれた場所は、私の自宅から数キロの地点で、よくジョギングしているところなのです。日中は車通りが多いのですが夜になると車も少なく、明かりもほとんどない場所です。走っていて、突然、クマさんに出会いたくないのでしばらくは違うジョギングルートを選ぶしかありません。

先日は自宅の外で「キャーン」という叫び声が聞こえて、窓を開けてみるとキタキツネが走っていました。札幌市内中心部にも鹿が出没したり、ヒグマも住宅が密集している場所に出没してコンポストをいたずらしている姿が目撃されたりしているので注意が必要です。

クマなどの野生動物が人里に降りてくるのは人がクマの生息地を奪っているのか、森の中のエサが減っているのかわかりませんが、人と野生動物との新たな関係を考える良い機会になるのではないかと思います。住宅街で駆除するのも危険だし、放置して人に危害が加わるのはもっと危険なことです。共存の方法はどこにあるのでしょうか?

有名な「三毛別羆事件」は大正時代に北海道の苫前で起きた史上最悪の熊害(ゆうがい)であり、吉村昭が実話をもとに「羆嵐」(新潮文庫)という作品に残しています。とても恐ろしい小説です。

農業者のところに行くと、デントコーンやビートが熊に食べられたという話をよく聞きますが、直接熊と対面した話はあまり聞きません。熊の方も人と出会うのは嫌なのでしょう。まずは熊の生態を学ぶことからでしょうか?死んだふりをしても効果はないみたいだし・・・

日欧EPAは日本の農業にどんなインパクトを与えるか?

昨日、安倍首相が7月17日に日本とEUの経済連携協定(EPA)に署名しました。これにより、来年3月末には発効し、日本とEU経済圏での関税がほぼなくなることになります。アメリカと中国が関税戦争をドンパチやっているところでのEPA署名。新聞によると世界の国内総生産の3割を占める巨大な自由貿易圏が生まれるとのこと。おそらく、TPPも近く話がまとまると思うので、日本は自由貿易主義の最先鋒として世界の巨大市場に向けて Made in Japan を売り込むことになります。

同時に関税が撤廃されることで、海外の産品が日本に大量に入ってくることも容易に予測することができます。これからは国内外のマーケットで海外の産品と日本の産品とがしのぎを削ることになりますので、高い視野からのマーケティングやブランディング戦略が必要になるでしょう。

昨日のブログに書きましたが、日本が人口減少や深刻な少子高齢化を迎えるなかで、日本を訪れる訪日外国人観光客(インバウンド)は大幅に増加しています。シュリンクする国内消費をインバウンドがカバーする構造です。人だけでなくモノも海外との間で自由に流通する時代にあって、われわれは何をなすべきなのでしょうか?

唯一の答えは、国内外の消費者に選んでもらえる産品、より高付加価値で売れる産品をつくることでしょう。消費者にとってはさまざまな産品が市場に出回ることによって、選択の幅が大きく増えることになります。なかでも、自分の暮らしに合った特徴を持つ産品を選び、使い続けることになるでしょう。

一方で安価であれば品質などはどうでも良いという製品もあると思います。そのような産品はEUからわざわざ日本までやってくるとは思えませんが、今後、東南アジアの国々との自由貿易が推進されれば厳しい状況になるでしょう。おそらくは淘汰されることになるでしょう。食料安全保障上のマクロな課題はあるにせよ、私が生産者サイドにたって考えると高付加価値で売れる品質のよいブランディングされた産品をつくることが必要なんだと思います。

訪日外国人観光客に何を食べてもらうか。

先日(というか、もう1ヶ月ほど前なのですが)、2年ぶりに仕事でタイに行ってきました。今は、新千歳空港からタイ航空(TG)が毎日バンコク便を就航していますから、ずいぶん近い感じがします。タイに限らず、アジア各国への航空ネットワークが整備されてきたので、気持ちの上での距離感はずいぶん少なくなりました。

これは日本から海外に行く利便性だけではなく、当然、海外からの来訪者にとっても都合が良い話です。今回はタイ航空を使ったのですが、海外のエアラインはほとんどのお客様が海外の方です。北海道への海外から成田や関空、羽田を経由することなく直接北海道に入ってきます。(だから新千歳空港の国際線は大混雑です。)

政府は2020年には訪日外国人を4,000万人に、2030年には6,000万人を目標にしています。ちなみに、今から5年ほど前に2012年の訪日外国人は836万人だったのが2015年には1,974万人になっています。航空ネットワークの拡充の他にもビザ緩和なども実施していますから決して無理な目標ではありません。

JTB総合研究所より

外国人観光客が増えるということは、当然ながら日本で落としていくお金も多くなります。これが、現在3.5兆円だそうです。2020年には8兆円、2030年には15兆円を消費してもらおうというのが今の日本の政策です。国別では、中国、韓国、台湾、香港、タイと続き、その多くは東南アジアの国々です。

さて、地域の農業の戦略として、この「観光立国日本」の計画はどのように見たら良いでしょうか?

日本は人口減少と高齢化で口の数と胃の容量が減っています。つまり、農産物の供給が過剰になる可能性があります。それを補填するのが、訪日外国人観光客(インバウンド)です。旅行先で楽しみなのは、やはり”食”です。外国人観光客に何を食べてもらうか。それ以前に、日本に来る前にその食材なり、料理なりを知ってもらうかというのがとても重要な戦略になると思います。

あわせて、観光客が都市部だけではなく、わざわざ農村地帯まで”何かを食べに来る”という仕掛けづくりがとても重要になると思います。

幸いにして「北海道」はアジアにおける超人気観光地のひとつです。北海道に来てくれた人たちに、おいしい食を楽しんでもらおうじゃありませんか。

ブランドも労働力によって支えられている

農業の話題ではないのですが、昨年、私が経営するスマートサポートという会社で、京都府の京丹後市や宮津市の特産品である「丹後とり貝」の労働軽減、軽労化に関する仕事をしました。

上の写真は、今朝、京丹後市久美浜の漁師、村岡克大さんから送られてきた久美浜湾の夜明けが美しい朝の作業風景です。夜明けとともに沖合に浮かべているイカダから吊るされたとり貝の稚貝が入ったコンテナを引き上げる作業が連日続きます。大きくて身入りの良い高品質なとり貝を養殖するためには、水温が高くなるこの時期にしっかりとメンテナンスすることが欠かせません。

しかし、このコンテナは水をたっぷり組み上げてきます。中に充填している基材を含めると30kg以上にもなります。これを毎日50個以上引き上げては再び海中に戻すという作業が繰り返されます。あまりにも苦渋な作業のため、腰痛が頻発し、疲労によって足元がふらついて落水するというこことあるそうです。

これまでに作業を自動化する機械、ロボット等も考案されたそうですが、やはり人の手での作業が一番良いということで、結局、今も苦渋作業に耐えて、素晴らしい逸品を生産されています。

京都府は、この「丹後とり貝」を地域のブランド産品として売り出したいと考えていますが、一方で苦渋労働で担い手の参入が少なく、生産者も高齢化しているのが現状です。養殖コンテナのメンテナンスが追いつかなければ品質も低下し、ブランドも毀損してしまうことになります。

農産物でも最近、労働力不足、担い手不足で地域の特産品の生産を維持するのが厳しくなってきたという話をしばしば聞きます。人手不足から手のかかる作業が少ない、コンバイン作物にシフトしているそうです。小麦や豆類は野菜に比べて付加価値が低いし、規模のメリットが働きますから、本来は人手を確保して野菜をつくった方が利益が大きくなります。

最近は、農作業のパートさんの時給も高騰しているそうです。高い人件費をかけても作業者を集めれれば良いのですが、繁忙期は他の農場も同じなので、人の取り合いになります。今後、若い世代を中心に規模拡大の動きがすすめば、人手の確保はやはり大きな課題となるでしょう。

農産物のブランディングのマネジメントも労働力をしっかりと考慮しながら実施しなければなりません。農産物のブランド化に取り組んでいるのは、自治体やJAが中心のことが多く、販売方法やプロモーション、パッケージ等のデザインばかりに気が取られ、本来の生産の持続可能性が忘れられているようにも思えます。

平成29年度の白書の特集に思う

 平成29年度の「食料・農業・農村白書」が5月22日に公表されました。私は起業した頃に何か資格でもとろうと思い、技術士受験をしましたが、日本の農業の現状や農政の方向性を知るにはこの白書を読むべきと誰かに聞いてから、毎年、必ず読んでいます。

 昔は今のように農林水産省のホームページから無料でPDFファイルをダウンロードすることもできませんでしたから、政府刊行物を販売している役所の中の売店で買い求めたものです。A4版で結構ボリュームがある書籍でしたから持ち歩くようなものではありませんでした。今では、 iPadの中に数年分の白書を持ち歩いています。

 さて、白書では毎年、巻頭に特集記事があるのですが、平成29度版は「次世代を担う若手経営者の姿 ~農業経営野さらなる発展に向けて~ 」と題した特集になっています。内容については普段、私が感じていることとそう乖離はしていないのですが、いよいよ農政も、農業者に経営感覚を求めていくのだな。と思わせる内容になっています。

 ”若手農業者”という言葉もなじみがなかったのですが、それは次世代の農業の担い手となる49歳以下の農業経営者ということと定義しています。今後、この若手農業者をターゲットとして効率的かつ安定的な農業経営を実現するために農業の付加価値の向上、規模拡大や投資を通じた生産性の向上のための農業施策が次々と打ち出されることになると思われます。

 この特集では、農業センサスやアンケートを通じて政策の妥当性をデータをもとに述べています。

 日本の農地面積は2016年で447万haで20年前からやく12%減少しています。農業従事者数は20年前からおよそ55%減少し、182万人です。この間に農業従事者の平均年齢も59歳から67歳に高齢化しました。耕地利用率は94~92%で大きく変化していないので、農業従事者ひとりあたりの耕地面積は単純に計算すれば、この20年間に倍増していることになっています。しかし、実際のところ、今の日本の農業を支えているペルソナモデル的な農業者は見えてきません。今回の白書の特集を読むと、その実像が見えてきます。

 ところで、そもそも日本における農家の定義はどうなっているかといえば、「経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯又は農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯」となっています。当然、この定義にある農家は農業だけでは食べていくことができませんから、兼業農家という農業の他に仕事を持っている農家もあるし、経営耕地面積が30a未満かつ農産物販売金額が年間50万円以下の農家は自給的農家と定義されています。

したがって、一般的に農家といえば販売農家(耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家)のことを言います。

2015年の農業センサスの結果をみれば、若手農家は全体の1割に過ぎませんが、経営規模や販売金額でみると若手農家の存在感が大きくなっていることがわかります。農地も基本的には若手農家に集約されており、その結果、労働生産性や農業所得が向上していることが明らかになっています。若手農家を対象としたアンケートの結果でも、労働力の確保や農地の集積、生産資材価格の引き下げといった項目に関心が集まっていることから、若手農家が、経営者であることが伺えます。

これらの分析結果から、農業者は経営者であることが求められ、より大規模で効率的な経営や付加価値の高い農業経営が支持されることは間違いありません。農地の流動性を高め、農業の機械化やIoT化といった最先端の技術普及を促進するために、農業あるいは農地が投資対象となると思われます。また、高齢化と人口減少の社会のなかで、国内需要だけを見るのではなくグローバルな視点から足元の農業経営を見つめることが、これからの農業経営者にとって必要な能力といえるでしょう。

・・・このようなことは、これまでも私が講演等で何度も話題提供しているのですが、多くの農業者がその意味を理解できないようです。それは、日々の農作業に追われるなかで、目の前の、足元のタスクに使われている労働者だからです。未来を見つめ、自らの経営を、そして自身を客観的に見る能力が求められます。それは、農業だけに限ったことではありませんが。