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コンサルタントのブログ

農政改革について

昨年の暮に政府が「農業競争力強化プログラム」を決定し、先般の国会で「農業競争力強化支援法」をはじめとする”農政改革8法案”が可決成立しました。先に成立した、改正農地法、改正農協法をふくめ、農政改革を実施する根拠法案が概ね出揃い、農政改革がいよいよ実行に移されようとしています。

先の国会で成立した「農業競争力強化支援法」の提出に至る過程で、農水省の法律案に当初記載のあった農業者の努力義務について自民党内でも問題になったようです。

その詳細については、農協新聞に詳しく書かれていますが、要はこういうことです。

【当初案】
「農業者は、その農業経営の改善のため、農業資材の調達又は農産物の出荷若しくは販売に関して、必要な情報を収集し、主体的かつ合理的に行動するよう努めるものとする」

【修正後】
「有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて、農業経営の改善に取り組む」

政府は農業者の自律的な経営を促したいようです。裏返して言えば、努力もしない、自立もできない農業者は農業者にあらず。ということのようです。

法律案が修正されたからといって、農政改革のベクトルは変わることもなく。農業者の皆さんは、収益性を高めるなど、よりよい経営を目指して努力をしなければなりません。これは、ここで農業者とは、個人営農の方ばかりではなく、農協等も含まれます。

「収益性を高め、より良い経営をを目指すために努力する。」このように文字に起こしてみると、当たり前のことのように思います。一般の事業者では当然のことだし、努力せずに経営が行き詰まっても誰も同情してくれる人はいません。自業自得というやつです。

しかし、農業というのは、生命のインフラ産業であり、国家の安全保障を担っている産業でもあります。儲からないからといって産業としての農業を切り捨てると、日本の国民は食べていくことができません。たとえ、大赤字であっても、税金を投じて農地を守り、農業者の経営を支えていかなければならないのです。それを政府がどのように考えるか。それが農政改革です。

そもそも、農地法や農協法、すでに廃止になって久しい食管法など農業まわりの法律というのは、国家の安全保障上の食料安定供給を目的に戦後の食糧難の時代に制定されたものです。経済成長下で人口増加するなかで、いかに効率よく食料を増産し、効率的に集荷し、安価で市場に供給するかが国家存亡をかけた政治的な判断だったはずです。

ところが、1980〜1990年代にかけて食料が余りだし、飽食の時代などと言われるようになりました。減反政策が敷かれ、米から麦や豆などへの転作が奨励されるようになりました。2,000年代に入ると、高齢化が社会問題になり、2010年代にはついに人口減少局面に入りました。世界的にも自由貿易が標準化されつつあり、食料、農業も例外ではなくなりました。そこで、ついに抜本的な農政改革を断行することになったのでしょう。

農業が国家のインフラ産業であるという事実は、なにも日本だけに限ったことではありません。すべての国民が安心して食べていけるようにするのはどこの国でも一緒です。自国の農業を守りながら、農業を強い産業として育成するというのが各国農業のせめぎあいなのでしょう。とくに、日本とヨーロッパの国々は、高齢化や人口減少などの社会構造を抱えているので、輸出に向けた取り組みは急務となっています。これが「農業競争力の強化」なのです。

この農政改革の断行に関しては、急激な改革を望まない人たちからは大きな反発があります。しかしながら、すでに法律は成立して、あとは昨年末に決定した「農業競争力強化プログラム」の実行あるのみとなりました。政府はさっそく、この農業競争力強化プログラムに関する説明会を各地で実施しています。

あとは、個人や農協が具体的にどう取り組むのか、まずは、営農コストを下げるために、肥料や農薬等の資材を安価で仕入れること。そして、生産した農産物を市場に出すだけでなく、消費者等に直接販売することで、より有利販売につなげることが求められます。

具体的には、単肥の効率的仕入れと土壌分析によるBB肥料の活用や、産直ブランドによる消費者への産地の周知、GーGAPなどの第三者認証による信頼性の獲得など、できること、やるべきことはいくらでもあると思います。個人農業者、法人営農者、農協等、それぞれが地域のなかで役割分担することもできるでしょう。

なぜ、地域かというと、農業競争力強化プログラムの実行は、近隣産地との競争を意味すると思うからです。競争に勝つためには、戦略が必要です。戦略を実施するためには、技術や投資が必要になります。これから10年間で戦略的に地域農業に投資ができるかどうか。いま、農業は時代の変革点にあると思います。何しろ、政府は農業者に対して、努力を求めていますから、いま、努力をしなければ、残念ながら次世代に残っていくのは難しいでしょう。

大規模化と人手不足とIT農業

先日、某生産者が集まる勉強会で大規模にブロッコリを生産されている農場で話を伺う機会を得ました。もう、見渡す限りのブロッコリです。作型も十数におよびこれからの管理作業や収穫作業で、どれだけの「人による作業量」があるのだろう?と心配になって質問したのですが、これから毎日、数十人のパート労働者を確保しているので大丈夫。とのことでした。その労働力の募集方法には驚きましたが・・・

都市部でも「人が足りない!」と言われているのに、ただでさえ、人の少ない農村部で労働力を確保するのは容易であるはずがありません。私が住んでいる札幌近郊の農業者も、人手の確保が難しいので、高収益な野菜などの手のかかる作物は諦めて、ぜんぶ機械収穫できるものにした。という話はよく聞きます。人手の確保が農業経営上の大きな問題となっているのです。

 

一方で、作業用品を取り扱うお店に行くと、おしゃれな農作業着や長靴などがたくさん売られています。お店の方に伺うと、最近ではサラリーマンの主婦などが農家パートに出かけるときに、このお店で買ったお気に入りの作業着を着ていくそうです。売上も好調とのことでした。
作業用品店といえば、現場で働く男たちのプロショップというイメージがあります。そこに、女性がプロの農作業員として出入りするようになったようです。

このような主婦をはじめ、農作業の担い手を上手に増やすことが農業の付加価値向上、収益力の増加には欠かせない取り組みであると思います。健康増進に役立つ健康的でおしゃれな仕事として定着するような仕組みづくりはできないものでしょうか?

農業者の事業承継

ドウダンツツジ

今日から6月。

だんだん暖かくなってきました。木々は淡い緑色の新芽をつけて、花は咲き誇っています。私が北海道で最も良い季節だなと思うのが6月です。

農業者の仕事も春の植え付けが一段落する頃です。
日々の忙しさから、ひととき解き放たれて、今後の経営について考えることも多いのではないでしょうか?

昨年あたりから問い合わせがあるのは、農家の事業承継です。
経営権の移譲に伴う登記の変更などの実務はもちろんですが、土づくりなどの経営理念や行動規範の引き継ぎという話しもよく相談されます。親子ではなかなか面と向かって(冷静に)話をすることができないので、そこをお手伝いするというものです。

「農家だから経営理念なんてないよ〜」という方もいますが、これまでに実施してきた農作業の基本となるものがきっとあるはずです。そこから、農業に対する考え方を引き出し、文章にするというお手伝いもしています。

土づくりに関しては、その年の収穫に成果を求める施肥と、5年から10年という単位で土壌改良を考える施肥もあります。また、施肥を決定するための土壌分析の結果の見方なんかも経営移譲する際に引き継ぐべき重要な情報になります。

そのような情報を整理し、社会の動向を見ながら、今後の経営方針を決定することがスムーズな経営移譲には求められています。とくに、営農環境が激変しそうな状況だから先送りせず、今のうちにやっておきたいことです。

農業白書が公表されました。これからの農業経営に必要なのは?

平成28年度 食料・農業・農村白書が5月23日に公表されました。

毎年、この白書を見ると、今の日本の農業の方向性がわかります。農業関係者はぜひ見ていただきたい資料です。(上記のリンクから無料でダウンロードすることができます。昔は2,500円ぐらいで買ってたんですけどね。)

やはり、「攻めの農業」をベースに、「農業競争力強化プログラム」が強調されています。
農業者が所得を確保するために、肥料等の生産資材の引き下げや、卸売市場の合理化、直販の推進などの流通加工の構造改革を実施すること、さらに、全農改革が柱になっています。

これは、「生産者は適正な努力をすれば収益を確保することができるはずです。」という環境を整備しているわけで、逆に言えば、「努力しない(できない)生産者は、経営を継続するのが難しいですよ。」ということだと思います。経営努力というのは、集団営農等により大規模化であったり、より利益率の高い直販ルートの確保であり、そのために、GAP等の取組みを推奨しています。

個別の、個人経営レベルの生産者は人材的に厳しい環境に置かれることになります。数戸の生産者が集まって営農組織を結成し、法人化するなどしなければ対応が難しく、経営面積の増大や雇用労働によって、「経営管理の概念やシステム」が必要になるでしょう。これらのノウハウは今の生産者は持ち合わせいないはずです。

農協はどうでしょうか?
昨年の農協法の改正によって個別の農協は「自立して創意工夫で自由に経営展開を行うこ とで農業者にメリットを出す」ことを強く求めている。そのための事業計画の策定や営業などを戦略的に実施していかなければなりません。長い間、市場流通主体で受け身の販売方法をとってきた農協にとっては、人材やノウハウ面で厳しい時代がやってくるといえるでしょう。

もっとも、まず、そのような経営環境に立たされていることを認識しなければなりませんが。

これまで、農業は行政が主導的な役割を果たしてきましたが、行政が「創意工夫にあふれる事業戦略や経営管理の概念やシステム」を持ち合わせているとは考えがたいので、民間のノウハウ等を活用すべく、連携や提携等を加速しなければならなくなると思います。いままでとは異なった次元での「農商工連携」が求められると思います。

農産物ブランディングで最も重要なこと

地理的表示保護制度(GI制度)は、一昨年(平成27年)に新たにできた制度で、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」にもとづいて、地域で永年培われた生産方法や、気候、風土、土壌などによって、高い品質と社会的な評価を獲得するに至った農林水産物を国が認定するものです。

一般的には”結果として”「ブランド化」された産品が認定されています。北海道からは、現在までに、「夕張メロン」と「十勝川西長いも」が認定されています。

私はこの制度ができたときから、生産者団体がこの制度への申請をしようするのをサポートする「GIサポートデスク」の北海道担当アドバイザーをしています。この2年余りの間に多くの生産者からの相談を受けて農産物のブランド化の問題点がだんだん見えてきました。

その中で、もっとも重大な問題点は、「ブランドが定義できない。」ということです。

社会的によく知られた生産物があったとしても、そのブランドを宣言できる要件がしっかりとしていないということです。つまり、そのブランドの管理者が、どこまでがブランドとして品質を担保できるかが曖昧なのです。

たとえば、「◯◯大根」という地名を冠した著名な農産物があったとして、この特性とその特性を発現させるための生産方法が定義されていません。ここで、生産方法というのは、品種や育苗方法、気候や土壌、特殊な栽培方法などをイメージしてもらえば良いのですが、たとえば、土壌環境がその農産物の特性の決め手となるはずなのに、火山灰土壌でも重粘土壌でも作られているとか、品種が特殊であるにもかかわらず、種の管理がされおらず、誰でも入手可能な場合、その「名称」を名乗れる人が広い範囲に存在していて、同じ名称の農産物にも関わらず、品質にバラツキがあり、消費者の期待を裏切ってしまうだろうな。と思われるようなものです。

そもそも、なんとなく「ブランド化」されていても、そのブランドを管理する人がいなかったりする場合があります。よくあるのが、生産者はつくるだけで、流通や販売は、農産物の卸業者などが担っていて、実際にブランド管理をしているのは、生産者ではなく、流通業者だったりする事例もよく見られます。流通業者にしてみれば、これまで、時間とお金と営業力を駆使して、ようやく知られるようになったのに、突然、生産者が「これからブランド管理は生産者がやります。」と言われても困ってしまうでしょう。

ブランドとは、生産者側が決めるものではなく、消費者等の実需者がその価値を決めるものです。消費者の中でブランドとして確立されるまでには、長い年月がかかっています。それを短期間でブランディングしようとするのは、そもそも無理があります。

最近は農協の広域合併も盛んに行われていますが、合併によって農協の名称が変わると、農産物のブランド名称まで変わってしまう場合もあります。また、隣接するした産地が同じ農産物でそれぞれブランド価値が社会的に評価されていた場合、ブランドを統合してしまうと、ブランド価値を毀損してしまう場合もあります。

ブランドは顧客(消費者)との信用の積み重ねという意識をもって、戦略的な対応が重要になります。