Reclaim the Earth!

コンサルタントのブログ

ブランドも労働力によって支えられている

農業の話題ではないのですが、昨年、私が経営するスマートサポートという会社で、京都府の京丹後市や宮津市の特産品である「丹後とり貝」の労働軽減、軽労化に関する仕事をしました。

上の写真は、今朝、京丹後市久美浜の漁師、村岡克大さんから送られてきた久美浜湾の夜明けが美しい朝の作業風景です。夜明けとともに沖合に浮かべているイカダから吊るされたとり貝の稚貝が入ったコンテナを引き上げる作業が連日続きます。大きくて身入りの良い高品質なとり貝を養殖するためには、水温が高くなるこの時期にしっかりとメンテナンスすることが欠かせません。

しかし、このコンテナは水をたっぷり組み上げてきます。中に充填している基材を含めると30kg以上にもなります。これを毎日50個以上引き上げては再び海中に戻すという作業が繰り返されます。あまりにも苦渋な作業のため、腰痛が頻発し、疲労によって足元がふらついて落水するというこことあるそうです。

これまでに作業を自動化する機械、ロボット等も考案されたそうですが、やはり人の手での作業が一番良いということで、結局、今も苦渋作業に耐えて、素晴らしい逸品を生産されています。

京都府は、この「丹後とり貝」を地域のブランド産品として売り出したいと考えていますが、一方で苦渋労働で担い手の参入が少なく、生産者も高齢化しているのが現状です。養殖コンテナのメンテナンスが追いつかなければ品質も低下し、ブランドも毀損してしまうことになります。

農産物でも最近、労働力不足、担い手不足で地域の特産品の生産を維持するのが厳しくなってきたという話をしばしば聞きます。人手不足から手のかかる作業が少ない、コンバイン作物にシフトしているそうです。小麦や豆類は野菜に比べて付加価値が低いし、規模のメリットが働きますから、本来は人手を確保して野菜をつくった方が利益が大きくなります。

最近は、農作業のパートさんの時給も高騰しているそうです。高い人件費をかけても作業者を集めれれば良いのですが、繁忙期は他の農場も同じなので、人の取り合いになります。今後、若い世代を中心に規模拡大の動きがすすめば、人手の確保はやはり大きな課題となるでしょう。

農産物のブランディングのマネジメントも労働力をしっかりと考慮しながら実施しなければなりません。農産物のブランド化に取り組んでいるのは、自治体やJAが中心のことが多く、販売方法やプロモーション、パッケージ等のデザインばかりに気が取られ、本来の生産の持続可能性が忘れられているようにも思えます。

平成29年度の白書の特集に思う

 平成29年度の「食料・農業・農村白書」が5月22日に公表されました。私は起業した頃に何か資格でもとろうと思い、技術士受験をしましたが、日本の農業の現状や農政の方向性を知るにはこの白書を読むべきと誰かに聞いてから、毎年、必ず読んでいます。

 昔は今のように農林水産省のホームページから無料でPDFファイルをダウンロードすることもできませんでしたから、政府刊行物を販売している役所の中の売店で買い求めたものです。A4版で結構ボリュームがある書籍でしたから持ち歩くようなものではありませんでした。今では、 iPadの中に数年分の白書を持ち歩いています。

 さて、白書では毎年、巻頭に特集記事があるのですが、平成29度版は「次世代を担う若手経営者の姿 ~農業経営野さらなる発展に向けて~ 」と題した特集になっています。内容については普段、私が感じていることとそう乖離はしていないのですが、いよいよ農政も、農業者に経営感覚を求めていくのだな。と思わせる内容になっています。

 ”若手農業者”という言葉もなじみがなかったのですが、それは次世代の農業の担い手となる49歳以下の農業経営者ということと定義しています。今後、この若手農業者をターゲットとして効率的かつ安定的な農業経営を実現するために農業の付加価値の向上、規模拡大や投資を通じた生産性の向上のための農業施策が次々と打ち出されることになると思われます。

 この特集では、農業センサスやアンケートを通じて政策の妥当性をデータをもとに述べています。

 日本の農地面積は2016年で447万haで20年前からやく12%減少しています。農業従事者数は20年前からおよそ55%減少し、182万人です。この間に農業従事者の平均年齢も59歳から67歳に高齢化しました。耕地利用率は94~92%で大きく変化していないので、農業従事者ひとりあたりの耕地面積は単純に計算すれば、この20年間に倍増していることになっています。しかし、実際のところ、今の日本の農業を支えているペルソナモデル的な農業者は見えてきません。今回の白書の特集を読むと、その実像が見えてきます。

 ところで、そもそも日本における農家の定義はどうなっているかといえば、「経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯又は農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯」となっています。当然、この定義にある農家は農業だけでは食べていくことができませんから、兼業農家という農業の他に仕事を持っている農家もあるし、経営耕地面積が30a未満かつ農産物販売金額が年間50万円以下の農家は自給的農家と定義されています。

したがって、一般的に農家といえば販売農家(耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家)のことを言います。

2015年の農業センサスの結果をみれば、若手農家は全体の1割に過ぎませんが、経営規模や販売金額でみると若手農家の存在感が大きくなっていることがわかります。農地も基本的には若手農家に集約されており、その結果、労働生産性や農業所得が向上していることが明らかになっています。若手農家を対象としたアンケートの結果でも、労働力の確保や農地の集積、生産資材価格の引き下げといった項目に関心が集まっていることから、若手農家が、経営者であることが伺えます。

これらの分析結果から、農業者は経営者であることが求められ、より大規模で効率的な経営や付加価値の高い農業経営が支持されることは間違いありません。農地の流動性を高め、農業の機械化やIoT化といった最先端の技術普及を促進するために、農業あるいは農地が投資対象となると思われます。また、高齢化と人口減少の社会のなかで、国内需要だけを見るのではなくグローバルな視点から足元の農業経営を見つめることが、これからの農業経営者にとって必要な能力といえるでしょう。

・・・このようなことは、これまでも私が講演等で何度も話題提供しているのですが、多くの農業者がその意味を理解できないようです。それは、日々の農作業に追われるなかで、目の前の、足元のタスクに使われている労働者だからです。未来を見つめ、自らの経営を、そして自身を客観的に見る能力が求められます。それは、農業だけに限ったことではありませんが。

「設立15年」ありがとうございます。

株式会社リープスは先月、設立15周年を迎えました。

振り返って考えてみれば、農業者の経営、技術の指導は官が主導的に行うことが当然とされていたところに、民間の農業コンサルティング業をよく立ち上げたな。と思います。農業者は、公務員である農業改良普及員が無償で技術指導を行い、農協が生産物をすべて買い取ってくれる。収入が足りなければ、補給金や共済金で補填される。そんな経営環境にあって、わざわざ民間の事業者が提供する情報にお金を払う必要なんてないのです。つまり、市場は開かれていない。

しかし、これが農業者にとって恵まれた経営環境にあるかといえば、そうでもなく、経営に関して自分で決めれることはあまりない。だから経営責任を問われることもない。うまく行かなければ農政や農協が悪い。と他人に責任を押し付ける。農業”経営者”とは言われていますが、この状況は到底”経営者”ではありません。作業者、労働者です。

とはいえ、ゆっくりですが、この15年間で状況は変わりつつあります。六次産業化や農商工連携、農政、農協改革は、農業(作業)者を経営者にしようとするものです。農業は日本人がしっかりと食べていけるよう食料保障を担うセクターでありつつも、産業としてしっかり発展、成長していかなればならず、世界的な貿易自由化の流れの中で市場も国内だけでなく海外にも求めていくという状況になってきました。

また、他の産業以上に高齢化がすすみ、人手不足のなかで、経営を発展させていくには、もう作業者ではいられないのです。そこはリスクではありますが、大きなチャンスも生まれてくると思います。そしてチャンスを活かすためのヒントは他の産業がすでに経験していることも多いのです。

リスクを受け入れ、発展するという、他産業では当たり前の考え方がようやく芽吹きはじめました。

株式会社リープスは民間農業コンサルティング会社の草分けとして、今後も新たな提案をしていきたいと思います。

日本農業最大の危機は「労働力不足」

 2016年度の農耕作業員の有効求人倍率は1・63倍、養畜作業員は2・34倍と、全産業平均の1・25倍を上回り、人手不足は深刻な課題だ。(日本農業新聞 2017.12.28

有効求人倍率は常時雇用の求人が対象だが、JA全中は「農繁期などだけの短期アルバイトも確保しづらくなっている」(JA支援部)とみる。(1)これまで作業を頼んでいた親族や地域の女性らが高齢化でリタイアした(2)他産業も求人を増やし時給を上げる中、代わりを見つけられない――ケースが多いという。

盛岡市の野菜農家は「募集をかけても人が集まらないという農家が多い。短期間だけ来てもらうのは難しく、コンビニエンスストアで働いた方がいいと言われる」と語る。肉体労働に加え、短期間限定で作業時間が天候に左右される農業は稼ぎにくく、敬遠されているようだ。(日本農業新聞 2017.07.30

どの産業でも人手が足りないと言われている中、農業、畜産に関しては他産業と比較しても人が足りない状況になっています。わたしのまわりでも、収穫等の一時的な作業に人手のかかる作物は敬遠し、コンバイン等の機械力で収穫可能な作物しか作れないと言われている農業者もいます。一般的に人手がかかる作物は収益性が高いのですが、播種しても収穫期の人手を見込めないなどの理由があるようです。

私はいまの農業にとって最大の危機は、農業における「労働力の不足」だと思っています。やがて、今の農業者だけでは日本の農地の生産性を最大限活用することはできなくなるでしょう。

農業の生産性は、その農地から生産される農産物の経済性で評価することができます。もちろん、農地が農地として機能していて、何らかの作物が生産されていることは重要ですが、いわゆる、補給金等を目的として播種しただけの”捨てづくり”などは、農地の機能を活かしているとは言えません。また、高い生産性がある土壌では、より付加価値の高い農産物を生産して経済的な優位性を高めるべきだと思っています。より付加価値が高い農産物とは、消費者が買い支える動機があるものであり、しっかりとしたマーケティングができている農産物のことです。量的生産性から経済的生産性への転換が必要ではないでしょうか?

では、どのような解決手段があるのでしょうか?

ひとつは、農業への参入障壁を下げることです。これについては、これまでも議論されていましたが、今の農業者で農地生産性を確保できないならば、新たな担い手に頼る以外にはありません。その担い手は新規参入者だったり、企業だったり、外国人であることもあるかもしれません。

もうひとつは、投入労働力(消費エネルギー)に対する生産性を高めることです。IT技術やロボット技術、AIなどをフル活用することです。トラクターの自動運転や作物の生育診断とドローンなどによる自動防除、自動収穫機の開発等、いま話題となっているさまざまな技術をブラッシュアップして実用化することが必要です。

そのためには、俯瞰的に農業を見ることができる「農業経営者」の育成が必須です。いま、農業をしている人のどれぐらいが、「農業経営者」といえるでしょうか?多くは「農作業者」なのではないでしょうか?また、技術開発も国や地方自治体の試験場等がリードするのではなく、民間企業の技術の移転や、ベンチャー企業の育成が必要ではないでしょうか?

謹賀新年 2018

2017年10月 カナダ モントリオールにて

新年 あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

2018年 元旦

 

今年は札幌の自宅でのんびりと年越しをしました。三が日も自宅で過ごすつもりです。

さて、年齢を重ねるとともに時の流れる速度を早く感じるというのは、ジャネーの法則ですが、昨年はその法則の2倍ぐらい早く感じました。これまで、ずいぶんとビジネスの種をまいてきましたが、ようやく芽吹きはじめ、肥料や水をあげるのに忙しい1年でした。

株式会社リープスは4月で設立15年を迎えます。また、私が創業した株式会社スマートサポートが10月に設立10年、一般社団法人 The  Earth Cafe も7月に5周年(創業から10年)を迎えます。そして、私は昨年50歳の節目の歳を迎えました。

この人生の区切りともいえる1年の始まりを先ほど、近くの鎮守様で安寧であるように祈願し、おみくじを引いたところ「末吉」でした。これが転じて「大吉」となるよう、そっと神社の結び所にそっと置いてきました。

このブログでも何度も書いていますが、日本という国の社会構造が少子高齢化によって大きく変化しています。昭和時代の高度成長を経験した世代やわたしのようにバブル世代が50歳以上となりました、おじさんたちの古い昭和のビジネスの常識、秩序や成功体験が、いよいよ社会で通用しなくなるでしょう。そうすると若い世代が、柔らかい頭でゼロベースからモノを考えなけければならなくなります。世界がどのように変化しているのか、国際的な視野を持つことも重要になるでしょう。

私もこの数年は極力、常識にとらわれず、ゼロベースで考えようと努力することを習慣化しています。同世代から上の人たちには、まったく理解されないこともあります。年配の方々に理解されないのは仕方ないにしても、保守的な若い人たちに理解されないのは残念なことです。とくに、公務員や資格で生計を立てている人、長いこと保守的な大企業で働いている人に多いようです。そのような方々は、これまでは社会的な地位が高いと自他とも感じていると思われるように思います。それも、過去の常識の遺物だと考えるようにしています。

今年は、昨年までに芽吹いた種を、ある程度間引きし、大きく育てる歳にしたいと考えています。社会が大きく変化していくなかで、先入観のない視点を持てば、チャンスはいくらでもあると思います。

本年もひきつづきお引き立て賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

鈴木 善人