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コンサルタントのブログ

農業者の事業承継

ドウダンツツジ

今日から6月。

だんだん暖かくなってきました。木々は淡い緑色の新芽をつけて、花は咲き誇っています。私が北海道で最も良い季節だなと思うのが6月です。

農業者の仕事も春の植え付けが一段落する頃です。
日々の忙しさから、ひととき解き放たれて、今後の経営について考えることも多いのではないでしょうか?

昨年あたりから問い合わせがあるのは、農家の事業承継です。
経営権の移譲に伴う登記の変更などの実務はもちろんですが、土づくりなどの経営理念や行動規範の引き継ぎという話しもよく相談されます。親子ではなかなか面と向かって(冷静に)話をすることができないので、そこをお手伝いするというものです。

「農家だから経営理念なんてないよ〜」という方もいますが、これまでに実施してきた農作業の基本となるものがきっとあるはずです。そこから、農業に対する考え方を引き出し、文章にするというお手伝いもしています。

土づくりに関しては、その年の収穫に成果を求める施肥と、5年から10年という単位で土壌改良を考える施肥もあります。また、施肥を決定するための土壌分析の結果の見方なんかも経営移譲する際に引き継ぐべき重要な情報になります。

そのような情報を整理し、社会の動向を見ながら、今後の経営方針を決定することがスムーズな経営移譲には求められています。とくに、営農環境が激変しそうな状況だから先送りせず、今のうちにやっておきたいことです。

農業白書が公表されました。これからの農業経営に必要なのは?

平成28年度 食料・農業・農村白書が5月23日に公表されました。

毎年、この白書を見ると、今の日本の農業の方向性がわかります。農業関係者はぜひ見ていただきたい資料です。(上記のリンクから無料でダウンロードすることができます。昔は2,500円ぐらいで買ってたんですけどね。)

やはり、「攻めの農業」をベースに、「農業競争力強化プログラム」が強調されています。
農業者が所得を確保するために、肥料等の生産資材の引き下げや、卸売市場の合理化、直販の推進などの流通加工の構造改革を実施すること、さらに、全農改革が柱になっています。

これは、「生産者は適正な努力をすれば収益を確保することができるはずです。」という環境を整備しているわけで、逆に言えば、「努力しない(できない)生産者は、経営を継続するのが難しいですよ。」ということだと思います。経営努力というのは、集団営農等により大規模化であったり、より利益率の高い直販ルートの確保であり、そのために、GAP等の取組みを推奨しています。

個別の、個人経営レベルの生産者は人材的に厳しい環境に置かれることになります。数戸の生産者が集まって営農組織を結成し、法人化するなどしなければ対応が難しく、経営面積の増大や雇用労働によって、「経営管理の概念やシステム」が必要になるでしょう。これらのノウハウは今の生産者は持ち合わせいないはずです。

農協はどうでしょうか?
昨年の農協法の改正によって個別の農協は「自立して創意工夫で自由に経営展開を行うこ とで農業者にメリットを出す」ことを強く求めている。そのための事業計画の策定や営業などを戦略的に実施していかなければなりません。長い間、市場流通主体で受け身の販売方法をとってきた農協にとっては、人材やノウハウ面で厳しい時代がやってくるといえるでしょう。

もっとも、まず、そのような経営環境に立たされていることを認識しなければなりませんが。

これまで、農業は行政が主導的な役割を果たしてきましたが、行政が「創意工夫にあふれる事業戦略や経営管理の概念やシステム」を持ち合わせているとは考えがたいので、民間のノウハウ等を活用すべく、連携や提携等を加速しなければならなくなると思います。いままでとは異なった次元での「農商工連携」が求められると思います。

農産物ブランディングで最も重要なこと

地理的表示保護制度(GI制度)は、一昨年(平成27年)に新たにできた制度で、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」にもとづいて、地域で永年培われた生産方法や、気候、風土、土壌などによって、高い品質と社会的な評価を獲得するに至った農林水産物を国が認定するものです。

一般的には”結果として”「ブランド化」された産品が認定されています。北海道からは、現在までに、「夕張メロン」と「十勝川西長いも」が認定されています。

私はこの制度ができたときから、生産者団体がこの制度への申請をしようするのをサポートする「GIサポートデスク」の北海道担当アドバイザーをしています。この2年余りの間に多くの生産者からの相談を受けて農産物のブランド化の問題点がだんだん見えてきました。

その中で、もっとも重大な問題点は、「ブランドが定義できない。」ということです。

社会的によく知られた生産物があったとしても、そのブランドを宣言できる要件がしっかりとしていないということです。つまり、そのブランドの管理者が、どこまでがブランドとして品質を担保できるかが曖昧なのです。

たとえば、「◯◯大根」という地名を冠した著名な農産物があったとして、この特性とその特性を発現させるための生産方法が定義されていません。ここで、生産方法というのは、品種や育苗方法、気候や土壌、特殊な栽培方法などをイメージしてもらえば良いのですが、たとえば、土壌環境がその農産物の特性の決め手となるはずなのに、火山灰土壌でも重粘土壌でも作られているとか、品種が特殊であるにもかかわらず、種の管理がされおらず、誰でも入手可能な場合、その「名称」を名乗れる人が広い範囲に存在していて、同じ名称の農産物にも関わらず、品質にバラツキがあり、消費者の期待を裏切ってしまうだろうな。と思われるようなものです。

そもそも、なんとなく「ブランド化」されていても、そのブランドを管理する人がいなかったりする場合があります。よくあるのが、生産者はつくるだけで、流通や販売は、農産物の卸業者などが担っていて、実際にブランド管理をしているのは、生産者ではなく、流通業者だったりする事例もよく見られます。流通業者にしてみれば、これまで、時間とお金と営業力を駆使して、ようやく知られるようになったのに、突然、生産者が「これからブランド管理は生産者がやります。」と言われても困ってしまうでしょう。

ブランドとは、生産者側が決めるものではなく、消費者等の実需者がその価値を決めるものです。消費者の中でブランドとして確立されるまでには、長い年月がかかっています。それを短期間でブランディングしようとするのは、そもそも無理があります。

最近は農協の広域合併も盛んに行われていますが、合併によって農協の名称が変わると、農産物のブランド名称まで変わってしまう場合もあります。また、隣接するした産地が同じ農産物でそれぞれブランド価値が社会的に評価されていた場合、ブランドを統合してしまうと、ブランド価値を毀損してしまう場合もあります。

ブランドは顧客(消費者)との信用の積み重ねという意識をもって、戦略的な対応が重要になります。

衣食住は生活の基礎

先日、テレビを見ていたら、日本の衣料品の自給率はわずか2.8%だと言ってました。1990年頃は50%ぐらいあったそうです。わずか四半世紀の間に絶滅間近な産業になってしまったんですね。

そういえば、昔はみかけたテーラーとか縫製工場なんかは、いつのまにかなくなっていますね。ファストファッションの隆盛で同じものをたくさん生産して世界中に大量に販売するモデルが定着したことで、人件費の安いアジアの国々で大量生産して輸入しているようです。

昔から生活を支える基礎は「衣食住」といいます。
着衣によって身体を温め、栄養のあるものを食べ、雨風をしのいで安心して眠れる場所がある。これが究極の暮らしの基本ということです。
食料自給率は、このところずっと40%程度です。そして、衣類はほぼゼロ。
日本という国は、海外での生産に頼って生活の基盤を維持していかなければならないのですね。

それが、ダメだと言うつもりはありません。
何しろ、日本人の平均年齢は47歳。世界でも最も年寄りな国のひとつです。
少子高齢化が今後も進むことで、ますます老いる国になっていくでしょう。そんな状況で、自ら衣食住の生産性を高めるなんてことは、ほぼ不可能だと思います。

今後、日本は近隣の若い国からの手厚い”介護”によって生かされるのではないでしょうか?

それ以前に、もう、”国家”という枠組みは今の若い人にとっては、呪縛でしかないのかもしれません。

過去の、「●●でなければならない」的な”呪縛”に縛られることなく、現実を見つめて自由に発想することが必要だと思います。

改正農協法では農協の営業力が試される

昨年の4月、22年ぶりに農協法が改正されました。改正農協法では、「農協組織における主役は、農業者。次いで地域農協。」と示しています。そもそも農協は農業者が自らの利益のために自主的に設立した組織であり、優先的にメリットを享受すべきは農協ではなく、農業者であるという当たり前のことをわざわざ示しています。それだけ、農協という組織は”本末転倒”であるように国会では見えていたのでしょう。
農業者がメリットを得られるよう、「農協は自立して創意工夫で自由に経営展開を行う」よう強く求めています。
ここがポイントで、これまで、JAは破綻を未然に防ぐために中央会による経営指導や監査を受けていました。つまり、急に”自立して創意工夫で自由に経営展開しなさい”と言われても、そのための組織や人材は、ほぼ持ち合わせていないのが現状ではないでしょうか?

そもそも旧農協法が施行された昭和22年といえば、戦後間もない頃で食料需給が逼迫していました。食料を増産し安定的に供給するのが主たる目的であった時代であり、政府管理のもと農産物を効率的に集荷し、一元的に市場出荷することが優先されていました。つまり、「作れば(勝手に)売れた」時代であったといえます。農協を含む生産者は増産することだけに集中することができました。
ところが、いつからか食料は過剰傾向になり”飽食(豊食)の時代”を迎えることになります。経済的に豊かになり、海外から安い食料が輸入されるようになって、食料自給率は40%まで低下しました。農業者が高齢化し産業としての農業が弱体化しています。
さらに今の日本は少子高齢化、人口減少、市場開放という時代の局面にあって、ますます農業をめぐる情勢は厳しくなってきています。
農協も市場を分析しつつ消費者、実需者のニーズに対応し、有利販売しなければ収益を得ることが難しい時代であることは間違いなく、そんな背景があっての今回の農協改正で、「農協は自立して創意工夫で自由に経営展開を行う」ことが求められることになりました。
農業者メリットを創出するために、「創意工夫をもって自由に経営展開をする」した場合、何が起こるでしょうか?

当然ながらそれぞれの農協は自らの営業力で市場に農産物を売り込んでいきます。隣接する農協も似たような気象や土壌環境ですから、農産物の種類も概ね似通ってきます。そうすると、”激しい産地間競争” が起きるのではないでしょうか?
競争に勝ち抜くためには、つまり、消費者に選ばれるためには、価格や品質、ストーリー、ブランドで差別化を図らなければなりません。

これまで「差別化」なんて言葉は農業の現場にありませんでした。差別化を強調するために手っ取り早くできる方法が「ブランド化=ブランディング」です。地域の名称を上手にデザインしたロゴを作成し、衆目を集める。農産物の袋やダンボールにロゴをあしらって販売する。そんな、表面上のブランディングがあちこちで行われています。これは、農協だけでなく、いわゆる「個撰」で販売している個別農家レベルで行われていることです。
しかし、このようなブランディングは自分たちの自己満足で終わっている例が多く、継続性や効果の検証などはあまり行われていません。

そもそも、他の地域と比較して、自分たちの地域で優位なのは何なのか、土壌や気候、技術、品種・・・、さまざまな要因から、消費者に共感する品質やストーリーをしっかり見つけることが欠かせません。ブランドづくりには、綿密な構想が必要であり、満を持して世の中に出していかなければならないと思います。一度、世の中に出してしまうと、それを正すために長い時間と労力、資金がかかるものです。
だから、営業や販売に不慣れなスタッフが思いつきで産地ブランディングを実施するのはたいへん危険なことだと思います。