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平成29年度の白書の特集に思う

 平成29年度の「食料・農業・農村白書」が5月22日に公表されました。私は起業した頃に何か資格でもとろうと思い、技術士受験をしましたが、日本の農業の現状や農政の方向性を知るにはこの白書を読むべきと誰かに聞いてから、毎年、必ず読んでいます。

 昔は今のように農林水産省のホームページから無料でPDFファイルをダウンロードすることもできませんでしたから、政府刊行物を販売している役所の中の売店で買い求めたものです。A4版で結構ボリュームがある書籍でしたから持ち歩くようなものではありませんでした。今では、 iPadの中に数年分の白書を持ち歩いています。

 さて、白書では毎年、巻頭に特集記事があるのですが、平成29度版は「次世代を担う若手経営者の姿 ~農業経営野さらなる発展に向けて~ 」と題した特集になっています。内容については普段、私が感じていることとそう乖離はしていないのですが、いよいよ農政も、農業者に経営感覚を求めていくのだな。と思わせる内容になっています。

 ”若手農業者”という言葉もなじみがなかったのですが、それは次世代の農業の担い手となる49歳以下の農業経営者ということと定義しています。今後、この若手農業者をターゲットとして効率的かつ安定的な農業経営を実現するために農業の付加価値の向上、規模拡大や投資を通じた生産性の向上のための農業施策が次々と打ち出されることになると思われます。

 この特集では、農業センサスやアンケートを通じて政策の妥当性をデータをもとに述べています。

 日本の農地面積は2016年で447万haで20年前からやく12%減少しています。農業従事者数は20年前からおよそ55%減少し、182万人です。この間に農業従事者の平均年齢も59歳から67歳に高齢化しました。耕地利用率は94~92%で大きく変化していないので、農業従事者ひとりあたりの耕地面積は単純に計算すれば、この20年間に倍増していることになっています。しかし、実際のところ、今の日本の農業を支えているペルソナモデル的な農業者は見えてきません。今回の白書の特集を読むと、その実像が見えてきます。

 ところで、そもそも日本における農家の定義はどうなっているかといえば、「経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯又は農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯」となっています。当然、この定義にある農家は農業だけでは食べていくことができませんから、兼業農家という農業の他に仕事を持っている農家もあるし、経営耕地面積が30a未満かつ農産物販売金額が年間50万円以下の農家は自給的農家と定義されています。

したがって、一般的に農家といえば販売農家(耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家)のことを言います。

2015年の農業センサスの結果をみれば、若手農家は全体の1割に過ぎませんが、経営規模や販売金額でみると若手農家の存在感が大きくなっていることがわかります。農地も基本的には若手農家に集約されており、その結果、労働生産性や農業所得が向上していることが明らかになっています。若手農家を対象としたアンケートの結果でも、労働力の確保や農地の集積、生産資材価格の引き下げといった項目に関心が集まっていることから、若手農家が、経営者であることが伺えます。

これらの分析結果から、農業者は経営者であることが求められ、より大規模で効率的な経営や付加価値の高い農業経営が支持されることは間違いありません。農地の流動性を高め、農業の機械化やIoT化といった最先端の技術普及を促進するために、農業あるいは農地が投資対象となると思われます。また、高齢化と人口減少の社会のなかで、国内需要だけを見るのではなくグローバルな視点から足元の農業経営を見つめることが、これからの農業経営者にとって必要な能力といえるでしょう。

・・・このようなことは、これまでも私が講演等で何度も話題提供しているのですが、多くの農業者がその意味を理解できないようです。それは、日々の農作業に追われるなかで、目の前の、足元のタスクに使われている労働者だからです。未来を見つめ、自らの経営を、そして自身を客観的に見る能力が求められます。それは、農業だけに限ったことではありませんが。