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【9】権利取得により生じる義務/負担 ①

こんにちは! 新シリーズも3回目になりました。

 今日は、権利を取得することにより生じる義務と負担、という観点からお話ししたいと思います。

 前回、前々回では、権利取得により得られるメリットについてお話ししました。
一方で、権利取得をすることで発生する、負担、或いは、気を付けなければいけない面というのもまた存在します。

1.権利を取得/維持するために必要な費用(コスト)

 真っ先に思いつく負担としては、「出願/登録に要する費用」が挙げられるでしょう。
一般的に、通常出願してから登録を受けるまで、特に中間手続(不登録理由があることを審査において指摘され、これに対応する措置として「意見書」「手続補正書」などを提出すること)が発生しなければ、概ね15万円程度の費用がかかります(代理人に依頼、1件1区分の場合)。

 ですので、事業規模としてこのコストを吸収できないものについては、商標登録しなければ使用が危険なネーミング、は原則採用するべきではありません。商標権の効力は10年、しかも更新が申請により可能、という制度の建付けからして、長期的に資産として活用することを前提とした規定振りになっているということができます。

 その「更新」ですが、「申請」により可能、つまり更新の段階では「審査」がありません(サービスマーク導入特例で生じた重複登録など特殊な例を除く)。存続期間満了前6月以内に所定の更新登録料を納めれば権利が更に10年延長されます。更新登録申請に要する費用は、印紙代48,500円+代理人手数料(代理人に依頼する場合。印紙代は2013年9月現在)です。

2.権利者であるために行わなければならないこと

 上述した通り、継続して権利者であるためには

(1)更新登録申請を所定に時期に行うことが必要です。更新することにより商標権は半永久的に延長することが可能になっています。しかし、いったん登録を受ければ常にその地位が確保されるというわけではありません。
「使用の義務」及び「正当使用の義務」が権利者には課せられており、これを怠った場合にはせっかくの登録が取り消されてしまうこともあります。

(2)使用義務について 商標の保護対象は、マークそのものではなく、そのマークに化体している(=乗っかっている)業務上の信用です。ここで、使用されない商標には業務上の信用は化体しませんから、そうした商標には保護の価値がない、という帰結になります。

 制度上もこの点を如実に反映しており、継続して3年間、商標権者又はライセンシーが使用をしていない場合、第三者からの審判請求によりその商標登録が取り消されてしまう旨定められています(不使用取消審判)。この審判請求に対して、商標権者らは使用をしていたことを自ら立証する責任を負います。

 しかしながらこの「立証」という行為はなかなかに難儀で、はっきり言えば“予めそういうことも想定して準備しておかなければ、本当に使用をしていたとしても立証しきれず取り消されてしまう”ということも往々にしてあり得ます。この辺りのテクニックは回を改めて述べたいと思いますが、単に使用をしているだけでなく、使用のエビデンスを日付が立証できる形で残しておく、ということが取消審判対策としては必要です。

(3)正当使用義務について 商標権者は、「登録商標」の使用について専有します。つまり「登録商標に類似する商標」については、法上何らの権限も与えられていません(このあたり、「社会通念上同一」の観念とごちゃごちゃになるなど、正しく把握していないがためにリスキーな使用状態になっている例も多くみられます)。

 そして、類似範囲での使用が、結果として他人の商品/サービスと勘違いされてしまうような態様であった場合、条件次第な面もありますが「不正使用」といってやはり登録を取り消されてしまう窮地におちいってしまうことも考えられます。これは商標権者本人が行う場合もそうですし、ライセンシーによる使用が紛らわしい場合もそうです。

 ですので、

  (a)大原則として、使用する態様のものを登録する。登録したものを使用する。
  (b)他者にライセンスする場合、その使用態様について定期的に監視する。

 といった対策が必要となります。

3.権利の効力を減衰させないために行うべきこと

(1)他人の使用状況のウォッチを行うことは重要です。登録を受けたからといって他人が常に使用を避けてくれるとは限りません。他人の侵害的な使用を放置しているうちに、同様な業者が多数現われ、その対処に忙殺される(或いは対処をあきらめてしまう)といった事態を回避するためにも、初動は大事です。

 故意の如何をとわず、他人が自らの登録商標或いはその類似商標を使用している場合、速やかに通知をすることが重要です。知らずに使用してる場合も多くあり、初動だけで解決することも少なくありません。

(2)また、自らの登録商標がいわゆる“ウィークマーク”、つまりもともと普通名称や品質表示そのものにやや近かったり、或いは需要者にそのように勘違いされて使用されがちな言葉である場合、他人の使用を放置していると一層商標としての能力が弱体化していきます。登録商標であることを明記して使用することが重要です。

 次回は、商標権者としての義務を果たすための具体的な方法について述べたいと思います。

 長文にお付き合いいただき有難うございました。

 

  【弁理士 中山 俊彦 (あさかぜ特許商標事務所 所長)】 

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