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【5】「伝達ツール」に応じたブランドの浸透法

さて今回は、ブランドを浸透させるにあたって意識しておくべき、各伝達ツール(メディア)の特徴と現状についてお話ししたいと思います。

1.メディアにまつわる世の中の変化

(1)情報の「超」飽和状態

 下記のグラフは、平成23年8月に総務省が公表した「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果(平成21年度)」の中で示されている、「情報流通インデックスの計量結果」です。

図1 各情報量の推移<上の図をクリックすると若干大きな画像が表示されます。>

 

ここに「各情報量の推移」として示されているように、流通情報量(=各メディアを用いて、情報受信点まで届けられた情報量)は平成13年のほぼ2倍になっているのに対し、消費情報量(=情報消費者が、内容を意識レベルで認知した情報量)は平成13年からせいぜい1割の増加にとどまっています。

その対比対象となっている平成13年でさえ、流通情報量は消費情報量の約15,000倍だったのです。統計上の数値ですし、あるべき情報伝達効率の基準などは専門家ではないので深い考察を行うことはできないのですが、少なくとも以下は間違えなくいえると思います。

「もともと情報の洪水であったが、情報過多の傾向は益々とどまるところを知らない。」

(2)ネット隆盛/ネット情報飽和の時代

 上記右側の円グラフでの、「流通情報量」でインターネットが占める割合(0.8%)と、「消費情報量」でインターネットが占める割合(11.8%)とを見比べると、情報効率という意味では約15倍の効果が得られることが判ります。そうでなくても、放送メディアの情報は、インパクトは強いですが、短時間で流れていき、じっくり落ち着いて吟味するのに向いていないといえます。一方インターネットの情報は、閲覧者の意思で閲覧を希望するサイトにとどまることができる点で、情報消費者にとってはより融通が利くメディアであるということができます。

図2 メディアグループ別の情報量の推移<上の図をクリックすると若干大きな画像が表示されます。>

 そして、情報量の推移としても、他のメディアグループを尻目に、インターネットの情報量は膨張を続けています。平成13年対比でインターネットの流通情報量は実に71倍にもなっています。その一方で情報消費量としてはおおよそ2.5倍程度にとどまっています。

つまり、インターネットメディア単体で見たときにも、情報は過剰に膨張し続けており、消費が流通に到底追いつかない状態になっています。

2.メディアごとのブランド浸透法

 上記でお示ししたように、世の中にあふれる情報のほとんどは「消費」つまり認知されないままでいるのです。平成21年段階での情報の消費割合(消費情報量/流通情報量)は、実に26,500分の1です。「商標は物言わぬセールスマン」なんて言い方もありますが、こんな情報膨張時代に、どうやって商標に“営業”をさせればよいのでしょうか?
そのためには、メディア毎の情報伝達の特徴を認識する必要があります。

とても乱暴な分け方ではありますが、上記のような傾向の違いを踏まえれば、放送、新聞、雑誌などの「旧メディア」と、Webを介する「新メディア」とに分けて考えるのが傾向に沿った検討をするには適切と言えます。加えて、「旧メディア」よりもはるかに前から存在する「古典メディア」とでもいえばよいのでしょうか、“商品パッケージ”についても言及します。

(1)「旧メディア」(=放送、新聞、雑誌)でのブランド浸透

【一方向的、上意下達的】

旧メディア、いわゆるマスメディアは、「伝え手」と「受け手」という地位が厳然としています。広告のプロがクリエイティブを作り、高額の広告費用を支払って僅かなCM時間や広告スペースで一生懸命メッセージを発する。継続的に広告出稿できる予算があれば別ですが、そうでなければ、必然、インパクトをもって注意をひきつける“一発芸”的な表現にならざるを得ません。

つまり、一方的に商品の「良さ」だけをアピールすることになりがちです。一度に何百万人もの視聴者に働きかけることはできますが、当然、伝えたことに対するフィードバックを、商品の売れ行き以外では情報として得ることができません

なお、Webを用いたブランド浸透でも、こうした旧メディアにおけるのと同様に、一方向的、上意下達的に行っているものも散見されます。

【どうやってブランド浸透させるか】

上記のように旧メディアは、一回で極めて多数の人間の目に触れさせることができるという利点を有しています。しかし冒頭で述べたように、情報洪水の中で旧メディアだけでの浸透を目指すとすれば、いきおいインパクト重視の表現とならざるを得ません。それが商品に対する思い、コンセプトと合致すればよいのですが、そうでない場合は困難な状況に陥ります。思うに、旧メディアでの浸透が有効になるのは、一定程度の認知が既に得られた状況に限られると考えます。

商品のスペックについては商品案内サイトに呼び込む、そのためのきっかけとして旧メディアでは、商品の良さをおしつけがましく伝えるのではなく「ストーリー」を伝える、というのが、印象付けることが得意な旧メディアの活用法としても一般的な手法だと思います(「詳しくはWebで」というやつですね。)

(2)「新メディア」(=Web)でのブランド浸透

【多方向的、乱反射的】

Webによるブランド浸透は、旧メディアとは異なり、一度に何百万人単位の認知を得ることはできません。しかし、近年のSNS(Facebook、mixi、twitter、google+など)では、友人の「シェア」や「イイネ」や「RT」により、母数が少ない伝達情報であっても幾何級数的に情報拡散がなされます。

そして、“あの友人が「イイネ」といっている(「RT」している)、あの商品”という風に、自動的に信頼度の高いクレジットが付与された状態で拡散されていくことになります。

また別の場面として、Amazonや楽天、カカクコムなどのe-コマースサイトにおける「口コミ」情報が挙げられます。通常のCMでは商品の「欠点」を積極的に伝えることはしません。しかし「口コミ」では赤裸々に、時には辛辣に、その商品の長所と短所を“暴露”します。それは実際に購入し使用した人の声である、という点で、SNSとはまた異なる意味での信頼度の高いクレジットが付与されています。

需要者は既に、「すべてにおいて満点な商品」などないことを知っています。往々にして機能・効能と価格とはトレードオフだし、頑丈だけど重たい、とか、安くて良いけど時間がかかる、とか、長所と短所があることを知っています。その上で、自分が受忍できる短所と譲れない長所を探して検索するのです。そうやって実際に購入した商品体験が口コミのものと異なれば、今度は自らが口コミを書きこんでいきます。

【どうやって浸透させるか】

このように、Webを用いたブランド浸透においては、自身の商品が多方向から見られ、長所も短所もあらわにされる、ということを認識しておくべきです。ただ逆に言えば、自らの商品に対する思いをストレートに表現し、それに共感してもらえれば、有効に機能するメディアであるといえます。その意味で、奇をてらわずに、地道にファンをつくることを意識して、良いところも悪いところも正直に表していくことが、情報拡散を引き起こす一番の近道なのではないでしょうか

(3)「古典メディア」(=店頭POP、パッケージ)

【文字通り、古典的な“旗印”】

パッケージは、それ自体がブランド浸透を促すものではなく、むしろ上記のような各種プロモーションに触発された需要者がその商品を認識するための“旗印”となるものです。とはいえ、パッケージデザインやネーミングで需要が創出されることももちろんあります。このあたりは、作り手として売っていきたい層、使ってほしいシーンを想像して、そこにアジャストしていく…という、前回のエントリで述べたことがそのまま当てはまることになります。

3.まとめ

 情報氾濫の時代です。皆が声高に競い合って自分の良さをアピールしている状況です。そんななかで、他人よりも大きな声で自分の良さを肩肘張ってアピールしようとするのではなく、商品の特徴(良さも悪さも含めて)をありのまま伝え、ファンになってもらうアプローチにシフトしていきませんか?

CGM(=Customer Generated Media)が有史以来もっとも充実した時代、そうしたアプローチに追い風となる状況は出来上がっていると思います。

次回、「共感プラットフォーム」の構築方法についてお話ししたいと思います。

長文お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

【弁理士 中山 俊彦 (あさかぜ特許商標事務所 所長)】

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