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新春アンケートの回答で想いをめぐらせたこと

ニューカントリー

 昨年の秋に毎年恒例のニューカントリー誌の新春アンケートへの回答依頼があったので、今年も設問に対しての率直な意見を述べさせてもらいました。

今年の設問は以下のとおりでした。

【設問】
① 地域の過疎の実態と既存対策の問題点
② 求められる対策、取り組んでみたいアイデアや地域の実戦事例

 この設問に対して私の回答に対して編集部から「進化(過疎)の先にある未来をゼロから考えよう」 という見出しがつけられました。私の回答は下記のとおりです。

 農業者から「地域から人がいなくなり、コミュニティが維持できない。」という相談をいただくことがある。特に農業専業地域では、一戸あたりの農業経営規模の拡大は、離農者の増加を意味し、同時に地域に居住する住民数も減少している。そのような地域を抱える自治体では費用対効果の観点から教育やインフラ整備などの住民サービスの提供がしにくいのが実態であろう。
 しかし、農業経営規模の拡大は現在の農政の方向性であり、今後もこの方向性を維持するであろうから、農村の過疎化は今後より深刻化すると思われる。これはある意味、農業という産業の進化として積極的に受け止め、この進化の先にある未来の農村のあるべき姿をゼロベースから考えるべきではないだろうか。
 一案として、住民が所有する農地の近くに居住している現在のスタイルから、職場である農地と居住地を分離し、数十戸以上の人たちが集約的に住むコミュニティ・デザインを考え、それぞれの地域に特有の持ち味、地域資源を活用したコミュニティ活性化戦略を立案する「むらづくり会社」などはどうだろうか。例えば、酪農地帯では家畜ふん尿によるバイオガス発電施設を導入し、居住区への給電や温水(暖房)の提供、コミュニティの経営資源を活かした起業促進などによって、新たな住民を積極的に受入れる仕組みをつくるなどワクワクするような魅力的なアイディアが次々と出てきそうである。

 3年前にアフリカのマラウィに行ったとき、都市部、農村部関係無く、広い国土の至る所に人が歩いているのを見て考えさせられました。農業機械や合理的な栽培方法が確率されておらず、公的交通機関や自家用車などが十分に普及していない環境では、農業者ひとりあたりの耕作面積が限られ、農業者は耕作地の近くに住まわざるを得ません。そうすると人口が都市部に過度に集中することはありません。一定の人口規模ごとにマーケットが立ち、地域のコミュニティができていると思われます。

 かつての日本でも同じような状況だったのではないかと思います。しかし農業技術の進歩や移動や通信のインフラの整備はは農業者ひとりあたりの耕作面積を増大させました。とくにスケールメリットが大きい北海道の畑作農家や酪農ではこの傾向が大きく、一定面積の農地が生み出すことができる労働力が減少することになったと思われます。

 これは、農業技術の進化ではないでしょうか。このような地域では人口が減り、いわゆる「過疎」の状態になります。上下水道などのインフラの整備や学校などの教育は一定規模の人口がなければコストが増大するので、この不景気の時代にはそのような恩恵を期待することはできないでしょう。そうすると今後、農村部はますます不便になっていきます。(この不便というのも実は考えもので、何を持って便利とするのか、その価値基準については、また別の議論が必要だと思いますが。)

 以上のように農業技術の進化と過疎化はトレードオフの関係じゃないかと考えます。今後、農業で生活をしていくためには、新しい合理的な農業技術を積極的に導入しなければならず、大きな投資も必要になります。一方で農場の近くで暮らしていくためには、さまざまな不都合もあるでしょう。

 これら農村部の過疎化の問題を解決するには2つの方法があると思います。

 ひとつは、より付加価値の高い農業を実戦し、単位農地面積あたりの収益を増大させ、雇用を生み出すこと。農業生産だけでなく、製造やサービスの分野にも進出して稼ぐ、いわゆる「6次産業化」です。農村地域の人口を増やすためには、かなり大きな規模が必要ですし、サービス部門では、外部から人を呼び込む仕組みが必要になります。

 ふたつめの解決方法は、 この際、働く場である農場と居住地を分けて、地域で一定の人口規模を維持できるコミュニティをつくることです。インターネット等の通信インフラを積極的に活用し、農場を遠隔で監視し、異常を知らせたり、さまざまな事象を予測することは技術的に可能な時代になっているように思います。

 昨年、ドイツに農業コンサルティング研修に行った際に、コミュニティにほど近い肉牛農家が設置したバイオガスプラントで発生した熱をコミュニティの地域暖房に使うという計画を聞きました。エネルギー問題も人々がある程度の規模感でコミュニティをつくることで解決のいとぐちが掴めそうです。また、その農場ではコミュニティ向けにファームショップも経営しており、地域住民の農業への理解の促進にも貢献しているようです。

 いずれの解決手法を使うにしても、農村地域を活性化させるためには大胆な発想の転換が必要になると思います。

 先週、中小企業家同友会の新年交礼会に出席した際に、浜中町農協の石橋組合長(釧路支部支部長)の講演で、オランダにおける搾乳ロボットの普及の件を話されていました。オランダでは搾乳ロボットの導入が進んでいて、牛舎作業がずいぶん省力化されたそうで、牛舎作業や農作業は主に夫の仕事であり、酪農家の奥さんは牛舎作業などはせずに、地域の学校の先生や郵便局等に働きに出かけていて、それとともに農場のマネジメントをしているそうです。
 昨年、デンマークの酪農家を訪問した際にも、同じようなことを聞きました。 牛舎の説明をしていた牧場主はきれいな革靴をはいて我々を案内しており、傍らでは5台の搾乳ロボットが稼働していました。いまやデンマークの牛乳の6割はロボットが絞っている。といっていたのが印象的です。
 日本では、搾乳ロボットが高額であるというのもありますが、概して否定的であまり普及は進んでいません。ただの農作業の省力化というだけでなく、地域コミュニティにも大きな影響を与える可能性がある。そういう大きな視点で新たな技術の導入が促進されればと思います。

 過去の成功体験が通用しない時代です。これまでの価値観を捨て、ゼロベースで考えなければこれからの仕組みをつくることができません。新たな視点で発想し、プロセスや結果を分析し、大胆に決断することが求められているんだと思います。