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【2】取得した商標の活用 ~商標権取得後の落とし穴~

<商標権を取得すると…>

商標権が特許・実用新案・意匠の各権利と異なる点はいくつかあるのですが、その最たるものとして 「時間の経過では陳腐化せず、むしろ使い方によって価値が上がる」 という点が挙げられます。

特許(発明)と対比しつつ、もう少し詳しく説明しましょう(挿絵ご参照)。

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発明は、技術的思想の「創作」です。言い換えれば何らかの課題を解決するための技術的な工夫です。 従って、同じ課題を解決するための工夫として、新たな技術が次々と生み出されていきますから、一般的には時間の経過とともに創作としての価値は低下していきます。

一方、前回も述べたとおり、商標の価値は「創作」としての価値ではありません。商標は、それが“どの会社の商品か”を示すことができ、顧客誘引力を有するからこそ価値があります。言い換えれば、商標の価値はそこに乗っかっている「業務上の信用」です。

信用は、継続して使用されるからこそ生まれるものですから、一般的には時間の経過とともに信用は蓄積され、価値は向上していきます。

こうした性質は、それぞれの法制度にも反映されています。 特許・実用新案・意匠にはその存続期間に限りがあるのに対し、商標は、一応の存続期間はあるものの、更新登録を行うことにより半永久的に保有することが可能です。

「活用」には、グラフにあるような商標の価値をいかに早く、大きく高めるか、という観点からの取り組みが大事になってきます。

<活用の作法>

では、商標の価値向上を加速させるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

商標法は、適正な取り組みを行う事業者を守るような規定の建付けになっています。 権利を取得した際に気を付けておくべき点につき、以下ご説明します。

(1)登録商標を、登録した指定商品(役務)に、適切に使用する

“何を当たり前のことを…”と感じるかもしれませんが、これができていない事業者さんはかなり多いです。

※ありがちな“残念な”例※

① 登録商標と現実に使用している商標が、一致していない  登録を「図形+文字」の結合で受けたのに、実際に使用しているのは「図形だけ」或いは「文字だけ」のようなケースがあてはまります。

② 登録したマークを使っているのだが、扱っている商品が登録されている指定商品ではない  例えば登録されている指定商品が「清涼飲料」で、現実に使用しているのが「日本酒」のような場合(同じ飲み物だから良い…なんてことはありません)。

③ 登録商標も使っているものの、バラバラな態様で使用しており、ロゴとして統一されていない 。 或いは、年月の経過とともに使用するロゴが変わってしまっている

こうした“残念な”例、何がマズいかというと…

① ⇒登録商標の使用と認められず、「不使用取消審判」の対象となってしまう可能性があります。

② ⇒同じく「不使用取消審判」、及び状況によっては「不正使用取消審判」の対象となってしまう可能性があります。

③ ⇒法的なペナルティはないですが、どれが本当のマークなのかが判然とせず、ブランド浸透に不利です。 こうした事態を避けるための対策として、

(a)「ロゴ規程書」の策定 (b)定期的な使用状況の確認

・・・が挙げられます。

「ロゴ規程書」は、使用する商標の使用態様について、背景色や表示媒体に応じた使用の大きさ、彩色、構成の配置などの許容範囲を定めたものです。

同じ会社の中でも、部署によって許容範囲の解釈が異なってしまう場合、或いは年月の経過とともに生じる解釈のブレを防止することができます。 そして、実際に使用されている態様が規程書に沿ったものか、また、各種審判や他者の権利侵害に該当してしまう可能性がないかにつき、定期的に確認、点検を行うことで商標の価値を高めていくことができます。

(2)他者に使用させる場合の留意点

取得した登録商標を、ライセンス設定して他人に使用許諾する場合があります。或いは、団体商標や地域団体商標は、もともと構成員に使用させることを前提とした制度です。

上記(1)で述べたように、自分が使用する時ですら適切でない使用になってしまうケースがあるのですから、他者に使用させるときはなおさらそのリスクは高いといえます。

こうしたリスクを回避するための手当てが、 (a)ライセンスであれば「ライセンス契約書の規程整備」であり、 (b)(地域)団体商標の構成員への使用許諾であれば「使用規程」の策定です。

「使用規程」の例としては、以下のようなものがあります。

>>  奄美黒糖焼酎

>>  今治タオル

ライセンスでも(地域)団体商標でも、定期的に使用態様についての報告義務を課することが望ましいです。

(3)侵害に、目を光らせる

商標権を取得したからと言って、他人が自動的にその使用を避けてくれるわけではありません。

もちろんある程度は、調査を行って未然にトラブル回避を行うのですが、不注意で、或いはわざと、侵害に該当するような使用をしてくる他者も存在します。そうした使用についても、意識してパトロールの目を光らせておく必要があります。

ちなみに、侵害事実をそのまま放置しているとどうなるでしょう?需要者がそのマークを信頼して購入したものの、期待していた品質でなかった場合、信用を失うのは本家本元の権利者です。また、模倣に対して脇が甘い会社だと思われると、第二、第三の模倣者を招くことにもなりかねません。そうなると、せっかく費用と時間をかけて登録したのに、登録商標の価値はますます損なわれてしまうことになります。

(4)普通名称化しないよう、気を付ける

これは、もともと独占適応性が弱めの言葉を商標にしたもの、特に地域団体商標において注意すべき点です。

このお話を説明する時の典型例として語り継がれているのが、次のエピソードです。

かつて○HKのお料理番組で、レシピの紹介の中で「味の○ 少々」といった表現をされていました。これに対して、「味の○」の商標権者がその放送局にクレームを申し入れたそうです。

「『味の○』は弊社の登録商標だから『化学調味料』と表現してほしい」と。

言葉も生き物で、使用のされ方によって人々の認識は変わっていきます。審査の時点では独占性があると認められた言葉であっても、その後世の中で普通名称或いは品質表示的に使用されていくことにより、商標としての機能を発揮できない言葉に“成り下がって”しまうことがあります。そうならないように、たとえ他人の表示が「商標的な使用法」ではなく例えば文章の中の表現であったとしても、繰り返しそのように使われると普通名称化してしまいかねないような場合には、ひと声かけて表現を改めさせることが必要です。

<登録後のメンテサービス>

なお、あさかぜ特許商標事務所では、登録後のメンテナンスサービスも提供しています。人の命を乗せる車も車検や法定点検があります。会社にとっての「命」といっても過言ではない業務上の信用が乗っかっている「登録商標」、その定期点検もしませんか? さて、次回からは「6次産業化推進における商標法上の問題点」という切り口から、2,3検討してみたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

【弁理士 中山 俊彦 (あさかぜ特許商標事務所 所長)】

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