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デンマークの有機酪農家のチーズ工房

 

デンマークの旅で訪問した有機酪農家。ご夫婦で25年前に古い畜舎を購入し、新規就農して酪農家になりました。就農当初は27haの農地に27頭の牛しかいませんでしたが、現在では220haの農地に150頭の牛を飼っています。
有機農業に転換したのは 18年前、チーズ製造をはじめたのは11年前、現在では硬いタイプの5種類のチーズを製造しています。

なだらかな丘陵地に放牧される牛

この時期のデンマークは日照時間も少なく、天気も悪いのですが牧草はしっかりと生育しているように見えました。

 

Osteriet Hinge

 ヒンゲデイリーはすぐ近くに湖があります。すばらしい環境です。
訪問した日はクリスマスが近かったので、近くの森からはクリスマスツリー用のモミの木が伐り出されているのを見かけました。


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 それにしても、グーグル・マップは便利ですね。

 

牧場に併設されたショップ。開店日は限られている様子。

お見せは小さく、冷蔵ショーケースが一台あるだけです。冷蔵ショーケースの中にもあまり商品は陳列されていません。

 

チーズ工房の内部

現在、チーズの製造はメーカーと提携しています。メーカーと提携することでこの牧場のブランド価値を維持しながら、生産と物流、そして顧客を確保することができています。

この牧場で生産された原乳を直接加工していますが、パスチャリゼーションしないでチーズを作っているのが特徴です。硬いチーズしか作らないのは水分を低く抑えて衛生リスクを回避することが目的です。そうしないと許可がおりないからだそうです。この工房ではバターも作っていますが、これはパスチャリゼーションしています。

 

フリーバーン牛舎

有機酪農をはじめたのは、「まわりの環境に負担をかけないから。」決して急がず、自分のペースで納得のいく仕事がしたいという考え方が有機農業への移行につながったそうです。飼料はすべて自給飼料を用いており、乳量はおよそ8,000キロとのこと。

放牧期間は原則的に4月15日〜11月1日としています。

 

ディープリッター

ここでは冬期間、ディープリッターという方式を採用しています。敷料を次々と牛舎に運び込み牛に踏ませて牛舎内で堆肥化を促進させるという方式です。日本ではバイオベッドとか言われているものと同等だと思われます。放牧開始の時期にはワラは高さ2mにまで達するとのことです。牛舎にはほとんど臭いがなく衛生的だと感じました。このディープリッター方式は家畜福祉の面からも大変評価されています。

日本だと、このディープリッターは一度牛舎外の堆肥舎に運び込んで、半年から1年間ぐらい積んでしっかりと発酵させてから農地に施用するところですが、ここでは牛舎からでたワラはそのまま、つまりワラやふんがしっかりと分解されていない状態で、飼料作物畑に施用されるというから驚きです。堆肥にするとメタンガスなどが発生するので堆積しないのが最近では一般的とのこと、確かに今回、デンマークを移動している間、堆肥舎とか堆肥が積み上げられるところはほとんど見ませんでした。

ところかわれば、常識も大きく変わります。
固定概念で物事を決めつけてはいけませんね。自由な発想からイノベーションは生まれるのだと、改めて気付かされました。

 

牧場主・・・お名前を失念してしまいました。

ワラを直接、農地に施用することで問題はないのかと牧場主に尋ねると、最初の5年ぐらいは飼料作物の生育障害が出ることもあるが、それ以降になるとまったく問題はなくなると自信を持っておっしゃっていました。

 

素敵なお宅です。

チーズ工房や牛舎を見学した後は、ご自宅で自家製チーズとコーヒーをごちそうになりました。

 

テーブルにはチーズと黒パン、コーヒーがセッティングされていました。

決して大きなお宅ではありません。ご自宅ですから生活感もあります。落ち着いた雰囲気で、なるほど、有機酪農家の住宅だと、なんとなく思いました。

牧場のご夫婦 (奥さんのお名前はエリーナさん)

おいしいチーズをいただきながら、チーズ製造にかける思いをこのように語っていました。

新規就農した際に、今の状況は想像すらしませんでした。常に消費者の声に耳を傾けつづけていたらこのような経営になったのです。

デンマークの消費者は生活費の10%を食費に使っています。アメリカは7%。イタリアやフランスは16%と高いのです。いちがいに比較することはできないのですが、良い食、良い料理を望む人は、必ず良い原料を求めるため、我々、生産者との間のコミュニケーションが生まれます。

安い価格の食を提供するマクドナルドなどの商品は決して良い製品ではないと思います。大きなスーパーマーケットで売られている安い食品も良い商品とは思いません。彼らは資本力にものをいわせて食を牛耳っているだけです。

消費者も有機農産物を求めているといいますが、実際には、言っているとやっていることは違います。でも、言っていることは求めていることでもあるのです。

我々は、これまで一貫して有機農産物(エコ製品)は正直な商品であることを訴えてきました。
今では消費者から強い支持を集め、有機農産物の消費量も増えてきました。これらの顧客は我々の経営を買い支えてくれています。その証拠に金融危機のとき、すべての消費が落ち込みましたが、有機農産物の消費だけは伸びていました。
我々は消費者にウソをつかず正直であって、知識のある消費者としっかりと手を組むことだと思っています。そのような消費者との協力関係をしっかりと築くことで、我々の製品を選択していくれるのです。

・・・牧場経営主の強い信念と事業に対する意志を感じました。
この牧場には、日本からの研修生が学んでいました。酪農学園大学の卒業生のシオザキさんです。シオザキさんの実家は酪農を経営されていて、ゆくゆくは経営を引き継ぐのだそうです。彼女の貪欲な学ぶ姿勢にもたいへん感銘を受けました。

研修生のシオザキさん