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【7】権利取得により得られるメリット①

知財コラム(新シリーズ)第1回

あさかぜ特許商標事務所 弁理士の 中山 俊彦 です。

これまでのコラムでは、ブランド構築の重要性=「共感プラットフォーム」としてのブランド、という観点からお話をしてきました。

ここから数回は、権利化(=商標登録)することで生じるさまざまな事象について、種々の観点からお話ししたいと思います。むしろこちらの方が弁理士としては「本業」ですね(笑)

概ね、以下のような内容をお話ししていきたいと思います。

第1回 権利取得により得られるメリット①
第2回 権利取得により得られるメリット②
第3回 権利取得により生じる義務/負担
第4回 登録商標の正しい使い方①
第5回 登録商標の正しい使い方②
第6回 更新登録申請について/使用態様の留意点

 

【商標登録により得られるメリットとは?】

商標登録を行うには、手間とコストがかかります。
我々のような代理人に依頼した場合、金額の多少はあるものの、出願から登録までで概ね14~15万円程度がかかります(1区分1件の出願、10年分の登録料込みの金額。1日あたりおよそ40円)。

「1日あたりおよそ40円」というフレーズで思い浮かべるもの、何かありませんか?

…よくあるのは、保険(特に医療保険やガン保険)のCM、ですよね。
実は商標登録も、一番のメリットは保険と同じ「安心」という点にあるのです。

ある会社(A社)が、市場のニーズに合致した新商品Xを開発した場合を想定してください。
市場の中で自社の商品であることの“目印”として、何らかの商品名やロゴマークを決めてパッケージにつけるのが一般的です。

その“目印”としてつける商品名やロゴマーク、商標登録について何の手当も行わない状態で使用していた場合、以下のような困ったケースに陥ることが考えられます。

<ケース1> 他社による“目印”の模倣

品質の良さもあり売れ筋になっていた同社の商品。しかしある日小売店の店頭をたまたま通りがかると、どことなく似た、でも自社のとは違う商品が売られています!しかも同じような商品名、同じようなロゴマークをつけて。おまけに自社商品より少し安いです。

こうなると、いろいろなデメリットが生じてきます。

(1)需要者が、他社商品を自社のものと勘違いして買ってしまう⇒収益機会の損失
(2)他社商品の品質が劣悪な場合、自社商品についても評判が落ちてしまう
(3)結果的に当初事業計画未達・規模縮小を余儀なくされる

これらによる損失は、「1日およそ40円」では済まないでしょう。

<ケース2> 他社の権利侵害となるリスク

A社の新商品Xの売り上げは好調、更に増産体制にはいるかな、と思っていた矢先、同業他社であるB社から警告状が届きました。 「弊社は商標『○○』の商標権者です。貴社は貴社商品に商標『○○』を権原なく使用しており、弊社商標権を侵害しています…」

A社は出願前にしっかり先行調査をおこなっておらず、B社の商標登録の存在について知らなかったのです。「知らなかったんだよ」といっても許してはもらえません。A社は泣く泣く商品名とパッケージを変更することになりました…。

パッケージの変更コストももちろんですが、既に印刷している販促物に要した費用、その廃棄費用等を積み上げていくと…、結構ゾッとする金額になることが多いです。

<ケース3> 他社による権利取得の脅威

更に怖い話をします。

売れ筋になっているA社の商品を目の当たりにしたC社。調べてみると、A社は商標登録をしていません。そこでC社は自ら出願してその商標を取得してしまいました。

その後、C社はA社に対し、登録商標の買い取りを求めてきました。
「そんなヒキョウなっ!」と叫んでも後の祭りです。

いかがでしょう?このように、商標登録を行うということは、それ自体が多大な利益を生み出す、という性質のものではなく、登録を受けていなかった場合に生じ得るさまざまなリスクを未然に回避することができる、という点にこそ本来的な意義があります。文字通り「保険」の発想です。

“ウチの商品は模倣されたり、名前が勝手に権利とられたりすることはないよ~” と思っているかもしれません。でもそれは、まだ商品が有名になっていない今だから思うこと、であることが多いです。実際に売れて有名になってから手当てをしようと思っても、上記のケースのように“後の祭り”になってしまうこともあります。もちろん上記のケース3は極端な例ですが、C社のように悪意をもったかたちでなくとも、偶然のバッティング、のケースは実務上もしばしば見受けられるところです。新しい商品を販売する、新しい市場に打って出る、といったとき、技術調査や市場調査を行って可能なリスク回避を行うのと同じように、ネーミングについても未然にリスクについて配慮することが大事です。

商標登録を行うことによる直接的・積極的な「メリット」も、もちろんあります。しかしそれは、一般的には出願・登録して即座に生じるものではありません。しばしばお話しているように、登録商標は『信用のおサイフ』として機能します。継続的に事業を行うことにより積み重なる信用、これを蓄積する旗印として商標は機能し、登録を受けていることによりその機能の保全を法的にも確保することが可能となるのです。

次回は、その直接的な「メリット」=法的な効果 についてお話ししたいと思います。

長文にお付き合いいただき有難うございました。

 

  【弁理士 中山 俊彦 (あさかぜ特許商標事務所 所長)】 

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